技能検定 射出成形の仕事

特級技能士が詳しく解説 成形条件の作り方 射出成形の基本

2018年12月11日

本日のテーマは、射出成形における成形条件の作り方基本編です。

成形条件の作り方は、金型形状や不良状況によって様々です。

一概に「これが正解」というものはありません。

顧客要求に合致することが重要です。

 

成形条件の作り方 基本編

射出成形は、プラスチック原料を溶かして、金型へ充填する加工です。

射出成形で使用されるプラスチック原料は、熱可塑性です。
温めると溶ける。冷ますと固まる性質です。

溶かした原料は、金型に充填された瞬間から固まっていきます
射出は、素早く充填することがポイントです。

金型内に90%程充填されたら、保圧をかけていきます。

保圧の役割は金型からの逆流防止製品の収縮分の補充の意味があります。

保圧をかけて、金型内にパンパンに押し詰めるイメージです。

 

射出成形のチャートで見ていきましょう。

step
1
成形スタート

金型を閉めて成形スタートする。

step
2
射出

射出は、溶かした原料が固まる前に、素早く充填。

step
3
保圧

保圧は、金型からの逆流防止、収縮分の補充。

step
4
冷却&計量

金型内で冷ます。
金型内部には冷却回路があり、冷却水が流れています。
充填された樹脂の熱を、水冷で冷やします。

この冷却時間中に、次のショット分の原料を計量する。

step
5
取り出し

金型を開いて、製品を取り出す。

step
6
繰り返す

成形スタート〜取り出しまでを繰り返す。

 

このステップ全体の条件を、成形条件といいます。
本日は、この内

ステップ2 射出
ステップ3 保圧
ステップ4 冷却

の、金型を締めている時の条件に関して詳しく解説していきます。

射出

(ⅰ)射出のポイント

射出成形で、金型内に溶けた原料を充填するポイントは、流れの先端(フローフロント)を意識することです。

金型が閉じた状態は、製品部は空洞になっています。
その空洞に、充填されるフローフロントがどうやって流れていくかをイメージします。

この金型空洞内に充填する90%くらいは、充填速度で管理します。

金型内は、狭い部分、分岐点、袋小路など形状が様々です。
・狭い部分は流れにくい ⇛ ショート
・分岐したら収束します⇛ 収束部にはウエルドライン
・袋小路はガスが抜けない ⇛ ガスやけ

複雑な形状に合わせて、フローフロントの速度を調整しなくてはいけません

成形品の状態を観察しながら、1-5段階の速度変化を付けて最善をつめていきます。

【充填速度による不良】

  • 外観上の不良(ジェッティング、フローマーク、エア模様、ウエルドライン、ガス焼けなど)
  • 機能・形状の不良(ソリや残留応力の増加による変形)
  • 重量がバラツキ不安定    などです。

 

(ⅱ)充填速度の設定方法

1ショット目の射出ポイントは、

  • 速度は1速(慣れている人は多段速)
  • VP切換位置で、保圧は0に設定
  • ショートショットから成形

その後、VP切換位置を前にしていき、充填量を徐々に増やしていきます。

 

【ショートショット法の例】

計量完了~VP切換位置を増やしていき、どの程度充填されるか調べて行く方法です。

下の図の様に徐々に充填量を増やしていきます。

 

金型内の充填量が決まったら、充填速度の調整をしていきます。

スクリュー位置に対して、フローフロント位置を意識します
そして製品の外観を見て、不良の発生位置を確認します。
発生箇所に対するスクリュー位置の速度を変更していきます。

・ゲート通過位置で、シルバーが出る ⇛ ゲート通過位置の速度を落とす。
・ボス通過時にウエルドが強い ⇛ 速度を下げる
・湯じわ ⇛ 速度が遅い

 

プラ太郎
不良発生箇所通過時のスクリュー位置速度調整がポイントだね👍

 

(ⅲ)射出速度の設定注意点

初めから、計量値や充填速度を見極めるの難しい。

  • 金型の構造
  • 製品の大きさ
  • 成形機の選定(スクリュー径)
  • 樹脂の流れやすさ  など

色々なことを考えながら慎重に成形しましょう。

充填し過ぎ(オーバーパック)て金型を破損させてしまうのはNGです。
ショートショットだと離型できない金型もありますが、少しづつ充填量を増やしていく方法が最善です。

基本的には、1速で不良発生なく充填できるのが理想です。
ただそんなに上手くはいきません。

  • フローフロント
  • スクリュー位置
  • 不良の発生箇所

よく確認し、不良発生箇所に応じた速度調整をしていきましょう。

適当に運よく条件が出てしまうこともあります。
しかし、トラブルが発生した時に対応出来ません。

根拠に基づいた成形条件作りを心がけましょう。根気が大事です。

 

保圧

(ⅰ)保圧の考え方

保圧の役割は、

  • 金型からの逆流防止
  • 冷却と共に進行する樹脂体積の減少を補充   です。

充填速度で90%まで充填し、その後保圧に切り替えます

保圧をかけ過ぎるとオーバーパック、バリや変形、離型不良に繋がります。

一般的に、保圧設定は2段階で設定します。
肉厚製品やバリが発生しやすい金型では、3~4圧で設定します。

【保圧工程で発生する不良】

  • 保圧圧力が低い(保圧時間が短い)と発生する不良は、ヒケ、ボイド、寸法過小
  • 保圧圧力が高い(保圧時間が長い)と発生する不良は、バリ、オーバーパック、寸法過大

 

(ⅱ)保圧の設定方法

①保圧時間

保圧時間は、製品の【ゲートシール時間】が目安となります

製品の「ヒケ」状態を目視で確認し、許容できる程度の保圧を短時間でかけます。
徐々に保圧時間を上げて行くと、比例して製品重量も上がっていきます。
そしてある一定の時間以降は製品重量は安定します。

この重量が安定した時間を、【ゲートシール時間】と言います。

一般的に、【合計保圧時間=ゲートシール時間×1.1】と言われています。

 

【ゲートシール時間計測】

保圧時間

(sec)

製品重量

(g)

0.5 100.1
1.0 100.3
1.5 100.6
2.0 100.8
2.5 100.9
3.0 101.0
3.5 101.1
4.5 101.2
5.5 101.2
6.0 101.2

この場合だと、4.5(sec)×1.1=4.95(sec)ですので、5.0(sec)が適正な合計保圧時間になります。

 

【注意点】

  • ゲートシール時間は、金型温度や、樹脂のスクリュー内滞留時間によって大きく変化します。連続成形中にサンプリングをして下さい。
  • 仮基準の充填速度や保圧を変えてしまうと、このゲートシール時間も変わってきます。
②保圧

合計保圧時間が決まったら、保圧力を設定していきます。

目視にて、ヒケ・バリなどの外観状況を確認しながら、徐々に保圧を上げていきます。

一般的な保圧の見極めとしては、「下限」と「上限」を探っていき、その中間を基準とします。

  • 下限=ヒケが許容される
  • 基準=中間
  • 上限=バリが許容される

製品良品サンプル、嵌合物(組み立てた時の相手)のサンプルと、比較して要求事項に沿った製品を目指します。

 

(ⅲ)保圧設定の注意点

射出速度と同様に、保圧時間、保圧の設定も、シンプルがベストです。

製品は収縮します。
冷え固まった後に、寸法、重量が良品になる様に
品質基準下限ギリギリでなく、余裕を持たせ成形しましょう

収縮は、原料の材質や、次工程の冷却時間に大きく左右されます。
収縮分を考えて製品作りをすることが重要です。

金型設計段階で肉厚不均等や、金型の精度不良などにより、成形条件で良品がとれないこともあります。

成形条件が出なければ、金型修正を検討しましょう。

試作段階で、不具合は全て叩いておきましょう。
量産中に必ずトラブルが起こります。

お客様や、設計担当者と相談して慎重に条件を作っていく事が重要です。

 

考察

本日は、成形条件の作り方をテーマにお話しさせていただきました。

成形条件の設定は射出成形の基本です。

今回解説した知識を、ぜひ現場で使ってもらいたい。

インプットした知識を、現場で使うことで経験になり自身に蓄積していきます。

本日の基本の知識を生かしていただき、積極的に条件作りのチャレンジをしてみてください。

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