射出成形工場にて射出成形技能士を目指している方、もしくは技能士であっても、きちんと「品質管理のノウハウ」を理解している方は少ない様に思います。
- 作業者・担当者がきちんと教育を受けていない。
- 指導者側の知識不足、教え方を知らない。
- 「成形課」「品質管理課」など縦割りの部署問題。
- 役割が、型換や立ち上げ業務しかない。 など
色々な要因はありますが、「勉強・教育の機会」が少ない事が問題と思います。
製造業において「品質管理のノウハウ」を知って実践することは、もっとも合理的に利益を上げる方法の1つです。
ぜひこの機会に、知識武装していきましょう。
製造業においては、お客様の要求する3要素に応えることで自社の利益を生んでいきます。
- 品質
- コスト
- 納期
その中の1つ「品質」についてどういったポイントで管理していくのか?
1からわかりやすく解説していきます。
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1.品質とは
「品質」とは、品物・サービスが、性質や性能を満たしているかどうかの評価です。
例)レンズの品質
- 外観(透明であること。ローレット加工がしてあること。)
- 機能(リブが折れていない事。ボスの穴径が寸法内であること。)など
2.品質管理の成り立ち
品質管理は、英語では「クオリティー コントロール(Quality Control)」と呼ばれて「QC」と略されます。
そもそもの始まりは、1920年代頃になります。アメリカのシューハートにより「管理図」が考案されました。
「管理図」を用いて、製品の機能に影響を及ぼさない小さなばらつきを許容し、見逃すことのできない大きなばらつきに対して適切な対策を取り、管理されるようになりました。
その後、抜き取り検査、その他の統計的方法が確立されていきました。「QC七つ道具」「新QC七つ道具」などが代表的です。
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3.QC的な考え方
品質管理のやり方、進め方の指針は下記の考えに則ります。
【品質管理の基本指針】
- 品質第一
- 事実による管理
- バラツキ管理
- 管理のサイクル
- 重点指向
- プロセス管理
- 標準化
- 再発防止
- 後工程はお客様
どれもなんとなく耳にした事があるのではないでしょうか?1つ1つきちんと理解することで、QCの理解が深まります。
①品質第一
品質が最優先とする考え方です。目先の利益のみでなく、顧客の満足や信頼による長期的な利益が重要です。
②事実による管理
理論や推論、思い込みによる誤判断を避けるため、事実に基づいた行動をすること。
三現主義「現場に赴き、現物を手に取り、現実を知ることが重要である。」もこの事実の管理の一つです。
③バラツキ管理
同じ金型、同じ機会、同じ材料、同じ方法で製造されたとしても、必ず「バラツキ」が生じます。
製品の機能に影響しない程度の小さいバラツキを許容し、見逃すことのできない大きなバラツキを確実に把握し、適切な対策をすることが重要である。
④管理のサイクル
PDCA(Plan計画ーDo実施ーCheckチェックーAction処置)を繰り返すことが重要である。
品質管理に限った話ではなく、全ての業務に当てはまりますね。
⑤重点指向
緊急かつ重要なものは何かを見極めて、優先度の高い問題から順番に対策すること。
製造業における「問題」はキリがありません。それら問題の原因内訳は、2種類あります。
- とるに足らない無数の原因
- 重大な影響を及ぼす少数の原因
その内、重要な影響を及ぼす少数の原因から処置をすることが重要です。
⑥プロセス管理
「結果が良ければ、すべて良し。」ではなく、その結果に至るプロセス(工程)が重要である。
- 作業者、機械によって異なる手順
- 違法な作業日程
- 帳尻合わせで危険な作業内容 など
この様なプロセスでは、安定した品質を確保することは難しいですよね。プロセスをきちんと管理していく事で、製造の信頼が上がっていくことになります。
「品質は工程で作り込め。」と言われる所以です。
⑦標準化
良い手順・方法は、標準化することで品質の安定に繋がります。誰がいつ作っても同じ品質を保つことが管理していく上で重要になります。
⑧再発防止
不適合が発生した際に、真の原因をきちんと調査し、対処することが再発防止に重要です。
なぜなぜ分析や、要因特定図、5W1H法、三現主義などを活用します。
全ての要因を洗い出すこと、思い込みを捨て「0ベース」で調査を始める事が重要です。
⑨後工程はお客様
各自が、自分の職務に責任を持ち、後工程に迷惑をかけないようにすることが重要です。その延長線上に全体の品質向上があります。
4.補足解説
ものづくりの管理は、「バラツキ管理」ともいえます。
全ての問題に目を向けるのではなく、製品の性能に重大な影響を与える原因を、優先的に適正な対策をしていくことが重要になります。
また、品質管理は1人だけで推進するのではなく、部署、職場全体が一丸となって取り組むことが重要です。
1人1人の意識を合わせて、全体で同じ方向に進んでいきましょう。