射出成形スキルアップ

射出成形作業 スキル習得 ロードマップ

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射出成形作業は、プラスチックやゴムなどの材料を溶かして金型に押し込む成形技術です。プラスチック成形品の90%以上が射出成形で加工されていることから、👑射出成形はプラスチック加工の王様👑と言われています。

この射出成形技術を習得し、専門家としてのスキルを高めるためには、以下のステップを踏むことが重要です。

プラ太郎
初心者からプロになるまでのロードマップを解説するよ!

 

1. 基本的な理解を確立する

1-1.知識をつけよう

射出成形作業の基本原理とプロセスについて理解することが最初のステップです。成形機の構造や機能、材料の特性、成形条件、金型の構造などについて学びます。職場でスキルを習得するには限りがあります。参考書や技術書を使って全体像を把握することがポイントです。

プラ太郎
地図を持たないで闇雲に歩いても目的地には到着できないよね。全体像をざっくりと把握しておこう。

射出成形工場で役に立つ参考書は下記リンクから

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射出成形 現場で役立つ知識を学ぶ おすすめ参考書

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1-2.講習会に参加しよう

日精スクールの様子(出典:日精樹脂工業)

また、基礎固めとして実際に射出成形作業を体験しましょう。射出成形メーカーの技術講習会で教育訓練をするとよいでしょう。付帯装置メーカーも技術講習会を開催されていますので、活用してみましょう。

プラ太郎
座学と実技講習を通して、射出成形の全体像がつかめるよ♪

 

2. 実践的な経験を積む

基礎を学んだ後は、職場のOJTを中心に実際に射出成形作業を体験していこう。

2-1.清掃作業

粉砕機の写真

ホッパードライヤー、原料タンク、粉砕機の清掃から覚えていきましょう。異なるメーカーや年代の違う機械の清掃方法を習得していこう。
組付けの順番が決まっていたり、構造ごとに清掃箇所が異なります。それぞれの機械の癖を覚えていきましょう。

 

2-2.原料準備

箱型乾燥機を使用して原料の予備乾燥。また、次に使用する原料の投入など原料の種類と準備方法を習得していきましょう。
PP、PE、PSなどは予備乾燥は不要です。一方、PC、ABS、PAなどは指定の温度で予備乾燥が必要ですね。
使用する料を考えて準備することが重要です。

 

2-3.パージ作業

成形準備の1つパージ作業。原料の交換や色換え。練り込み異物の除去など、様々な目的で加熱筒の原料を交換する作業です。原料は高価です。PP 150円~/kg、PC 250円~/kg、物性が優れているスーパーエンプラでは、2,000円/kg以上するものまであります。効果的にパージ作業をすることが歩留まりを改善し、利益に直結していきます。

 

2-4.クレーン操作

射出成形 クレーン操作の写真

クレーン玉掛け免許を取得しましょう。(扱う荷重によってクレーンは特別教育)講習を受けただけでは、クレーン操作は不十分です。資格取得後にクレーン操作を訓練していきます。
次に生産する金型の準備から始めて、成形機からの取り外し、つり込みとステップアップしていきましょう。
「ロケートリングを合わせて、水平に取り付ける。」先輩は簡単そうにやるんですが、いざやってみるとコツがいるものです。

 

2-5.段取り換え

金型を取り付けられるようになった後は、立ち上げ前まで準備を習得していきましょう。既存条件メモリの呼び出し、または入力して成形スタート前まで習得していきましょう。
ホットランナー配線取付金型温調機の設定ホース取付け取出しチャックを選定交換確認運転
型開閉時に配線やホースが挟み込んだり干渉しない様に取り回しを確認しましょう。
コンベアや製品受け箱の選定。製品ごとの仕様に合わせて準備します。

 

2-6.立ち上げ

成形スタートをしてみましょう。立ち上げ手順に沿って作業していきます。スタートは金型の保護を目的に、必ずショートショットからです。徐々に計量した樹脂の量と密度をあげていきます。

 

2-7.条件調整

品質のばらつきを調整するために成形条件の調整方法を学んでいきましょう。不良発生はケースバイケースです。様々な要因が絡み合っていることが多いです。
不良事象と発生個所をよく確認して、真因を見定めて条件を調整していきます。

 

2-8.保守

射出成形機スクリュー分解清掃の風景

日常点検、定期点検をはじめ、スクリュー分解清掃、金型のオーバーホールなど保守点検のスキルを習得していきましょう。
より専門的なスキルになります。これまで培ってきた知識、経験を活かして、職能の幅を広めていきましょう。

 

3. 問題解決能力を磨く

射出成形作業では、様々な問題が発生することがあります。原料、金型、機械、成形条件などの問題に対処するために、問題解決能力を磨くことが重要です。過去の問題や失敗から学び、改善策を見出すことが必要です。

3-1.不良対策・是正処置

不良発生時にオンタイムで対処できるとは限りません。不良が客先に流出してしまい、お客様からクレームがはいります。外観不良(シルバー、練り込み異物、ヒケ)であったり、機能不良(ショート、勘合できない、寸法逸脱)など不良は様々です。

こういったクレームに対して、当時の生産を振り返り真因を追求して、再発防止対策をしていきます。
原料ロット、成形条件の実績値、異常停止履歴、変更履歴など、何が原因であったら1つずつ探っていきます。

射出成形工場向けの対策書の書き方にて、流れを掴んでみてください。

3-2.能力を高める

成形は多能工と言われているように、色々なトラブルを対応できるまでに10年くらいかかります。

  1. 金型

    成形は金型9割という格言があるように金型の知識はトラブル解決能力に直結します。ゲート周辺、流動末端、スライド摺動部、PL(パーティングライン)は不良発生率が高い箇所です。
    どんな構造なのか。不良にどうかかわっているのか。を理解できると、対策の選択肢が増えますね。
  2. 機械

    射出成形機と連動する取出機の配線を改造をしている風景

    成形機、周辺装置の理解を深めましょう。グリスアップ時期や消耗品の交換時期の管理は基本です。成形機にヒーターマグネットスイッチは消耗品です。交換時期を予測して事前に交換することで、異常停止を予防できます。
    また、生産効率をアップする施策も重要です。型開閉時間、取出し時間の最適化。粉砕材の配合比。など、各機械の構造理解を深めることで、具体的な対応や、さらなる改造ができるようになります。
    また、今後は人手不足が加速していくことから、自働化やロボット連動などがテーマになってきます。機械の知識を身に付けておくことが重要です。

  3. デジタルスキル
    DXやデジタル人材という言葉をよく聞くようになりました。今後人材不足は明白です。IT技術の活用やロボット導入などテクノロジーをうまく活用するスキルが重要になってきます。
    プラファンでは、スマートプラスチック成形エンジニアと名付けて、射出成形×デジタル人材の育成を進めています。
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    スマートプラスチック成形エンジニア

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  4. 過去トラ管理
    トラブル履歴は、会社の財産です。過去トラをどう解決したかは、社内で更新・共有しましょう。「○○さんがいないとわからない」という属人的な組織は、離職や配置変更に弱いものです。
    対策内容と前後の変化など詳細に記録して、誰もが理解でき、引き継げる仕組みを作りましょう。
  5. 状況判断
    現場では、様々なポジションの人が関わって製造しています。国籍、人種、宗教、性別など、得手不得手もありますので、押し付けることなく、柔軟に対応する選択肢を持っておくことが重要です。その為には、日ごろからコミュニケーションが大切です。

3-3.技能検定に挑戦してみる

技能士資格を受験してみましょう。射出成形作業のレベルを測る1つとして有効です。2級1級特級と階級があり、実務年数におうじて受験資格が与えられます。
昇給昇進への登竜門とされている資格で、転職にもとても有利です。

技能検定 射出成形作業

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4. 最新の技術とトレンドを追求する

高機能素材week2023東京展の様子

射出成形技術は常に進化しています。新しい材料、成形機の技術、デジタル化などのトレンドを常に追求し、最新の情報をキャッチアップすることが重要です。業界のイベントや学会に参加し、専門書やオンラインリソースを活用しましょう。

昨今、Iot、DX、ロボット導入などが話題です。射出成形、プラスチック、金型関連の展示会にも、デジタル活用のIT企業やロボティクス企業が参加されています。

射出成形工場に関連のある展示会は下記の通りです。

展示会 開催頻度 開催地
IPF(国際プラスチックフェア) 3年に1回 東京
国際ロボット展 2年に1回 東京
高機能素材Week 1年に2回 東京、大阪
インターモールド 1年に2回 東京、大阪、名古屋

 

5.キャリアアップ、働き方

射出成形の知識技術を培っていくことで、キャリアアップにも積極的に挑戦していきましょう。
管理職への昇格、赴任、他部署への異動や転職も視野に入れていきましょう。
射出成形の技術者として、課題解決能力が磨かれていくと、市場価値は自ずと上がります。

  • 射出成形技能士資格
  • 開発プロジェクトメンバー
  • 改善活動
  • 英語やITスキル
  • ロボット導入連携 など

10年先、20年先の未来は不確実ではありますが、自身のスキルを高めていくことでどんな環境、時代でも稼げる人材になることは可能です。

未来志向を持って自身のキャリアを築いていきましょう。

 

6. 継続的な学習とスキルの向上

射出成形作業の習熟は一朝一夕にはなりません。継続的な学習とスキルの向上が必要です。新しい技術や方法論に対応し、自己を常に成長させる意識を持ちましょう。

プラファンでは、全国の射出成形技術者とコミュニケーションをとることで、切磋琢磨しています。
「うちの当たり前は、よそではありえない」情報を共有することで、比較できる環境を整えています。

  • ベテランがいない
  • 不良トラブルが解決できない
  • 良い設備ないかな
  • 金型の修正ができない

様々なトラブルが起こります。自社では解決が難しい問題でも、他社では既に解決策が出ていることもあります。

車輪の再発明:既に確立している技術を、再び1から作り直すこと」

全国の射出成形工場でこの現象が起こっています。情報をシェアして皆で次のステージへ進んでいきましょう。

実際に、技術者がコミュニティを作っている業界は少ないです。個々人の連携がとれた業界に進化することで、稼ぎやすい業界になります。結果として優位性が高まり、業界の求人力が高まります。

プラファンの実現したい未来

技術者の繋がりが鍵

ものづくりといったら 射出成形

我々の高い技術を声高らかに誇るために、業界が一丸となりましょう。

俺たちの仕事 射出成形は超カッコいい

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「射出成形業界を繋ぐ」プラファン運営者|特級技能士|若手に向けて射出成形スキルを熱血発信|俺たちの仕事 射出成形は超カッコいい|射出成形機をモチーフにしたプラモデルPLAIVE|

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