射出成形における最小クッション値の解説をしていきます。
- 最小クッション値とは
- 最小クッション値の意味と重要な理由
- 最小クッション値をもとにした品質管理方法
- 最小クッション0mmが危険な理由
1.最小クッション値とは
最小クッション値とは、充填した時スクリュー先端が一番前に来る位置です。
射出成形では、加熱筒にて樹脂を溶融させ、スクリューで計量します。
計量後、スクリューを前進し金型内に充填していきます。
充填した時スクリュー先端が最前進した位置が、最小クッション値です。
ところてんは、装填したところてんを最後まで突いてしまいますが、射出成形では、一般的に計量した樹脂の全てを充填することはありません。
クッションとして数mm程度残します。
最小クッション値は、他にも呼び方があります。
成形機のメーカーによって異なります。
- 最小クッション位置
- 最少クッション値
- 最前進位置 など
2.最小クッション値の意味
基本的には、最小クッション値が、3~10mm程度残るように充填します。
なぜ射出成形では、クッションを残すのでしょうか?
最小クッション値を残す意味
- 成形品を安定させるため
- 金型を保護するため
ⅰ.成形品を安定させるため
射出成形は毎ショットバラツキが発生します。
- 計量した樹脂の量
- 加熱筒の温度
- 金型温度
- 金型のガスベントの詰まり具合(ガス抜けの良し悪し)
- 季節 工場気温、湿度(特に油圧機) など
そのバラツキにより、最小クッション位置は、毎ショット若干異なります。
0mmまで押し切って充填していたとします。
この時、原料ロット変更などの要因により、計量した樹脂密度が少なくなったとすると、製品はショートしてしまう可能性があります。
逆に、密度が増した時は、その全てを充填してしまいます。するとオーバーパックしてしまいますね。
3〜10mmのクッション値を残すことで、バラツキを許容する緩衝材の意味を持ちます。
ⅱ.金型を保護するため
もう一つの、最小クッション値を残す意味は
金型を保護するためです。
例えば、最小クッション値が、30mmで成形しているとします。
この時、金型入れ子が破損しました。
全自動で成形しているので、そのまま充填をします。
すると、30mmで止まらず、0mmまで押し切ってしまいます。
金型の破損箇所からは、高圧の樹脂が漏れ出て行きます。
最小クッション値を、3〜10mm程度に設定しておくことで
トラブル時の金型オーバーパックを防止することができます。
ポイント!
最小クッション0mmが危険な理由
充填のバラツキやその他の外因により
- 製品がショートしたり、バリになったり成形不良が出てしまう
- オーバーパックして金型を破損してしまう
3.最小クッションによる不良監視
最小クッション値を監視することで、バラツキ管理をしていきます。
成形スタートから10ショットもすればクッション位置は、おおよそ一定になっていきます。この安定したクッション位置を基準に、監視していく事で、不良を検出します。
成形品の大きさや形状にもよりますが、簡単な例をあげて行きます。
最小クッションが、3mmで成形が安定している製品があります。
最小クッション値が、5mmだと、製品がショートしてしまいます。
逆に、1mmだとバリが強くなってしまいます。
こんな時に、最小クッション値を管理して製品の状態を監視をしていきます。
最小クッション値 | 品質 | 判定 |
5mm | ショート | ✕ |
4mm | 良品 | ○ |
3mm | 良品 | ○ |
2mm | 良品 | ○ |
1mm | バリ | ✕ |
この製品を成形する時、最小クッションは、2~4mmであれば良品です。
成形機の品質管理設定で、監視しましょう。
最小クッション値が、この監視幅を外れる時はアラームで知らせます。

4.最小クッション値の管理で注意すること
最小クッション値は、バラツキ管理の目安です。
目的は不良を検出することです。定期的に最小クッション値は記録しておきます。
前項で解説した通り、様々な要因で最小クッション値は変化していきます。
- 樹脂の原料ロット変更
- スクリュー逆止リングの消耗
- 加熱筒ヒーターの消耗具合
- 金型温度
- 金型の累積ショット数(ガス抜け具合)
- 外気温 など。
その都度、製品を見て、最小クッション値の監視幅は設定していきましょう。