射出成形機 スクリューの構造を解説します。
- スクリューの構造
- せん断熱とは?
- スクリュー・スクリュー3点セットの役割
- よくあるトラブル

目次
射出成形機の構造 スクリューの役割
スクリューは、射出成形機の射出ユニットの加熱筒中に入っています。
スクリューの役割は2つ。①プラスチック原料の溶融・計量と、②金型内への充填をになっています。
1.スクリューの役割
射出ユニットの役割を解説していきます。加熱筒の中は、スクリューが入っています。
【スクリューの役割】
- 計量:スクリューを回転させ、原料を溶かす。
- 射出:計量した原料を金型内に充填。
ⅰ. 計量
- 原料は、加熱筒へ自重落下します。
- スクリューを回転させることで、スクリューの溝に沿って原料が溶け、前方へ送られます。
原料は下記2つの熱により溶融します。
・加熱筒のバンドヒーターからの熱
・混練によって発生するせん断熱(下記に解説)
- 溶融した原料は、圧縮混練されながら先端部に送られると共に
スクリューは後方へ下がっていきます。
この時、スクリューを後方から押す力(背圧)をかけ、密度を上げます。 - 金型に充填される量(計量完了値)まで、スクリューは回転後退します。
最後に計量した原料にかかる圧を抜くためにサックバック(無回転後退)をします。
ポイント
【せん断熱とは?】
射出成形機の加熱筒内で、原料を計量するには、背圧をかけながらスクリュー回転します。
スクリューの形状は、溝が後方から供給され、中間部になるに連れ徐々に浅くなっていきます。
原料は溶けながら、空間が狭くなっていき、圧縮されていきます。
この圧縮された時に発生する熱を せん断熱 と呼びます。
スクリュー回転、背圧を高くすると、せん断熱は強くなります。

ⅱ. 射出
- 計量された原料は、スクリューを前方に押し込む事で、金型内に充填されます。
2.スクリュー・スクリュー先端の構造
ⅰ. スクリュー全体図
スクリューの全体図は下記になります。
- スクリュー
- スクリュー先端 の2つの部門で構成されています。
ⅱ. スクリュー供給部の構造(後方 全長の1/2)
自重落下してきた原料をスクリュー回転によって前に送ります。原料のかさがが大きいので、スクリューの溝が深くなっています。供給部は温度を低く設定します。
ⅲ. スクリュー圧縮部の構造(中央 全長の1/4)
供給部から送られてきた原料が圧縮混練されます。
スクリューの溝が徐々に浅くなっていきます。
原料はバンドヒーターの熱と回転の摩擦熱(せん断熱)を得て、温度上昇しながら溶融していきます。
ⅳ. スクリュー計量部の構造(前方 全長の1/4)
圧縮混練された原料は計量部で、よりムラ無く均一に混練され前に送られます。
ⅴ. スクリュー先端 スクリュー三点セットの構造
スクリュー先端は、細かく分けると3つの部品で構成されています。
スクリュー3点セットと呼ばれています。
- スクリューヘッド
- 逆止リング
- スペーサー の3部品が組み合わさり動作します。
【スクリュー3点セットの参考画像】
3.スクリュー先端の働き
ⅰ. 【計量中】のスクリュー3点セットの動き方
- スクリュー回転が始まると、
逆止リングが前側に動きます。 - スクリューヘッドと逆止リングの隙間から、
原料が前方に送られます。 - 前方に計量されることで、
スクリューが後退していきます。
ⅱ. 【射出中】のスクリュー3点セットの動き方
- 射出がスタートすると、スクリューは前に移動します。
- スクリューの動きに連動して、逆止リングは後ろ側に動きます。
- 逆止リングとスペーサーの隙間(下図青ライン)がなくなります。
- 計量された原料は前へ押し出します。
4.スクリュー、スクリュー3点セット よくあるトラブルと対処法
ⅰ. 異物混入による破損
スクリューやスクリュー3点セット(スクリュー、シリンダー、チェックリング)は、異物混入によって損傷しやすい部品です。原因として、金属片の混入が挙げられます。対策として、材料の管理を徹底し、マグネットセパレータを活用することが有効です。
スクリューは、表面がコーティングされています。金属片によりガリっと傷がついてしまうと簡単に復旧はできません。傷口が抵抗になり、溶融の不具合、原料の焼き付きによる黒点などの原因になりますので、金属が加熱筒内に入らないようにしましょう。
また、金属片がスクリュー3点セットの逆シリングや、ノズルに挟まり充填が安定しないことがあります。ノズルを分解して点検除去、必要に応じてスクリュー3点セットの交換をしましょう。
ⅱ. 練り込み異物・炭化物

スクリューヘッドの焼き付き画像
スクリュー圧縮部やシリンダーヘッドでは、高圧縮による原料の焼き付きが発生しやすく、蓄積すると剥がれ落ちます。特に高圧縮で溶融する原料や添加剤を含む材料は、圧縮部や逆シリングに付着しやすく、高速充填の成形品ではシリンダーヘッドに焼き付きやすい傾向があります。
ⅲ. スクリューヘッド折れ
高速充填を繰り返す射出成形では、スクリューヘッドとスクリューの連結部のボルトが経年劣化で折れることがあります。折れると樹脂が逆流し、計量分を充填できず、ショートショットや成形品の重量不安定が発生します。スクリュー3点セットは予備を常備しておきましょう。
5.パージの基本
パージのコツは2点です。
①まずはスクリュー全体の原料を、背圧を高くして抜いていきます。
②だいたい置き換わったら、先端のスクリュー3点セットの原料を掻き出します。
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射出成形 パージとは パージの基礎 目的別のパージ手順 理想のパージ方法を丁寧に解説します
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6.スクリュー分解清掃

スクリュー分解清掃の様子
加熱筒内、スクリューのトラブルには、スクリュー分解清掃が有効です。
下記記事で細かく解説しています。
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【保存版】射出成形 スクリュー分解清掃 手順と注意点を解説 動画や写真で丁寧に解説
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7.その他の解説
□スクリュー径D
Φ28、32、36、40、45、50など様々です。成形機のサイズごとに、スクリュー径を選定できます。作る成形品によって、最適な射出装置を選びます。
□溝の間隔(ピッチ)P
スクリューの前方から後方まで、均等間隔になります。
□溝の深さ
前方と後方で異なります。その比率は圧縮比と呼びます。