加熱筒内の樹脂を絞り出すことをパージと呼びます。
一般的な射出成形機は一本のスクリューで様々な樹脂を溶かし射出します。
樹脂の種類によってその特徴は様々
・樹脂の溶融温度・ガス発生の大小
・色、粘度、添加剤の有無 など
樹脂がきちんと置き換わっていないと、外観不良(異物、モヤ)、寸法不良(収縮違い)など不良の原因になります。
パージの基本は、きっちりと切り替えることです!
射出成形作業のパージは、大きく分けて5つのパージがあります。
射出成形機の構造を解説した上で、パージの目的と手順、注意ポイントなどを詳しく解説していきます。
1.パージとは


射出成形におけるパージは、加熱筒内の樹脂を絞り出すことを意味します。英語の「purge:一掃、抹消」が由来です。
射出成形工場では、「パージする」と言います。
射出成形機の構造、パージの目的と手順、理論をきちんと理解した上で、パージ作業をおこないましょう。
2.射出成形機のスクリュー構造
まずは、加熱筒内のスクリューの構造、スクリュー先端の構造をしっかりとイメージすることがポイントです。
大きく分けて2か所に樹脂が残りやすいです。(炭化物が付着しやすい)
樹脂が残りやすいところと樹脂が炭化しやすいところは一緒です。
【樹脂が残りやすい(炭化物がこびりつく)ところ】


①スクリューフライト部
樹脂を溶融する加熱筒内には長い1本のスクリューが入っています。
後ろから樹脂が投入→中間部で圧縮→前方に送られます。
加熱筒ヒーターの熱と、樹脂が圧縮された時に発生するせん断熱によって樹脂は溶融混錬されます。
圧縮部から計量部は、高温高圧に圧縮されスクリューに圧力がかかっています。
【スクリューの3つのゾーン】






②スクリュー先端 3点セット、ノズル
スクリュー先端とノズルの内側は、樹脂が高圧に射出されるので樹脂が残りやすいです。
特に逆止リングの周辺は複雑なので、残りやすいです。


先端は高温高圧になるので、同じ樹脂を毎日成形し続けると炭化物がこびり付いていきます。(正確には、滞留する樹脂が炭化していきます。)この炭化物が剥がれ落ち成形品に練り込まれます。


3.パージの基礎を理解しよう
パージの基礎
①スクリューフライト部
背圧を高め、スクリュー位置0mmで回転させ、どんどん絞る
②スクリュー先端
逆止リングを動かすことを意識して、何度も高速射出を繰り返す
スクリューの構造をしっかりと理解していれば、パージは簡単です。
前の樹脂が残りやすいところ(樹脂が炭化しやすいところ)を意識してパージしていきましょう。
4.目的が違う5つのパージ 方法と手順、注意点を解説
目的によってパージ方法は異なります。目的ごとに解説していきます。
【目的別 5つのパージ】
- 原料換え
- 色換え
- 立ち上げ
- チョコ停
- 練り込み異物
1.『原料換え』パージ方法
前の樹脂を残さずにパージする。
原料換え時のトラブル
・異材、色ムラ(前の樹脂が残っている)
1‐① 温度帯の同じ『原料換え』のパージ方法
温度帯の同じ原料替えは簡単です。そのままPPを投入しPOMをパージします。
下記の通り、POM ⇛ PPに置き換える時の解説していきましょう。
| A.加熱筒に入っている材料 | POM(180〜210℃) |
| B.置き換えしたい材料 | P P(160〜250℃) |
- 加熱筒温度を190℃の状態で、POMがなくなるまでパージする。
背圧を高めにかけて(スクリュー位置0mmで回転する状態を維持し)、スクリュー全体のPOMを押し出していきます。ノズル先端から出てくる原料の色やにおいで、PPに置き換わってきたと判断できます。 - 背圧を低くして、20〜50mm位まで計量して射出するパージに切り替えます。
スクリュー先端の構造は、前の原料が残りやすいです。逆止リングを前後に動かすイメージで、10〜20回程パージします。
1‐② 温度帯の違う『原料換え』のパージ方法
温度帯の違う原料替えする時のパージはコツが要ります。
下記の通り、PCからABSに置き換える時の解説していきます。
| A.加熱筒に入っている原料 | PC(280〜320℃) |
| B.置き換えしたい原料 | ABS(190〜250℃) |
- 加熱筒温度を300℃の状態で、PCがなくなるまでパージします。
- 溶融温度の違いを補うため、温度設定の許容範囲をカバーできる材料PEを投入します。
通常、ポリエチレン(PE)、一般用ポリスチレン(GPPS)などが一般的です。 - 背圧を高め、スクリュー位置0mmで回転し、スクリュー全体をパージします。
- 背圧を低くし、計量値を30(20〜50)mm位に設定し計量と射出をくりかえし、スクリュー先端をパージします。逆止リングを動かすことがポイントです。
- 加熱筒内がPEに置き換わったら、加熱筒温度をABSの成形温度に変更します。
- ABSを投入し、加熱筒内をPEがなくなるまでパージする。
原料替えの材料廃棄ロスは、できるだけ少なくしたいですね。高価な材料は、3,000円 / kg以上します。温度帯の違う原料替えは、安価なPEを使用する事で、パージ費用削減を意識しましょう。
2.『色換え』パージ方法
色換えパージの目的は、色の強さを意識しましょう。
黒が一番強い色です。(白も同様に強いです)
同じ温度帯の色換えパージは、3つに分けて解説していきます。
白以外の色→黒
白以外の色を成形している時は、そのまま黒色を重ねてパージすることで黒に置き換えられます。
白→黒(黒→白)
白から黒は、グレーになってしまいなかなか白色が抜けません。白色すじが残ります。パージ材で白色を抜いてから黒色を投入します。(黒→白も同様です。黒色すじが残ります。)
色付き→白
色付きから白にする時は、2同様に、一旦ナチュラルかパージ材に置き換えてから、白を投入しましょう。
温度帯の違う樹脂×色換え
温度帯の違う樹脂の色替えは、前後の樹脂の流れやすさを意識しましょう。
ABSの黒(230℃)→PCの白(310℃)
次の樹脂が高温の時、次の樹脂の温度でパージします。前の樹脂はサラサラですので、簡単にパージが可能です。
PCの黒(310℃)→PPの白(220℃)
次の樹脂が低温の時、前の樹脂温度でパージします。次の樹脂がサラサラなので、前の樹脂の色を抜きずらいです。
この時は、一旦パージ材で置き換えて、PCの黒を抜いて、温度を下げてからPPを投入しパージします。
3.『立ち上げ』のパージポイント
加熱筒内に高温のまま滞留している原料は、時間経過とともに熱劣化、熱分解が起こります。
この樹脂は、通常の流動より流れが良くなり、そのまま充填すると、オーバーパックし金型を壊してしまうことがあります。
基本的には、加熱筒内分の原料をパージすれば、成形スタートするには十分です。
4.『チョコ停』時の パージポイント
異常発生や、金型清掃で、チョコ停する場合がありますね。
パージしないでそのまま再開すると、オーバーパックやショートが発生する事があります。金型の破損の危険があり、後処理も大変です。
チョコ停時は一旦可塑化装置を後退させて、パージをしましょう。
チョコ停スタートは、いきなり練り込み異物が出てくる事は少ないです。
【チョコ停時のパージ量の目安】
- 瞬間停止時は、1ショット分程度パージ量
- 異常停止や金型メンテナンスにて10〜30分程停止した時は、5ショット〜加熱筒内を置き替え
ただし、成形機の大きさや、使用している原料の種類によって大きく異なります。
5.『異物不良が多発』時のパージポイント
連続成形中に練り込み異物が多発した時は、どんな異物か見極めが重要です。
異物の発生源の例
・黒点・茶点(ランダム):スクリュー炭化物→パージ
・製品の同じ部分に異物:金型からのインサート→金型掃除
・原料袋のカスや繊維:原料タンクや粉砕材→原料廃棄
スクリュー炭化物の対処方法
パージして、ノズル先端方出てくる樹脂を確認します。この時、まだ出続けているようなら、パージ材を使用します。パージ材を使用しても改善しない時は、スクリュー分解清掃をします。
過去にあった異物の原因
・海外製の原料を使用した時、ペレット1粒1粒にゴミが入っていました。
2.参考動画
■パージの基本■
スクリュー全体:背圧を高め、スクリュー位置0mmで回転し、スクリュー全体をパージします。
スクリュー先端:次原料に置き換わったら、背圧を低くし、計量値を30(20〜50)mm位に設定し計量と射出を繰り返し、スクリュー先端をパージします。
複雑な構造の逆止リングに残る原料をかき出す為に、逆止リングを前後に動かすことがポイントです。






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