今回は、パージの基本をしっかり丁寧に解説していきます。
技能検定の実技試験でも、パージ工程はありますね。
[等級別使用材料表]
等級 | X組 | Y組 |
1級 | PS | ABS |
2級 | PS | PC |
基本的な原理原則、ルールをしっかり学んでいきましょう。
目次
1.パージの考え方
加熱筒内に溶融樹脂を排出することを「パージする(パージング)」と言います。
成形機の状態と使用する樹脂の性質、及びパージングの目的によってパージの仕方は異なります。
(ⅰ)成形スタート時、チョコ停時
加熱筒内に高温のまま滞留している樹脂が時間の経過とともに熱劣化し、熱分解することを防止する為に、分解する前に新しい樹脂に置き換える必要があります。
○成形スタート時○
粘度の低下、熱劣化した樹脂をパージングし、新しい樹脂と置き換える必要があります。
この時、樹脂の中に練り込み異物(黒色や茶色の炭化物)が入っている様だと、樹脂が熱劣化の進行により炭化し、スクリューにこびりついていて、剥がれ出ている状態です。
そんな時は
- パージ数を増やして樹脂の量で排出する。
- パージ材(発砲性の洗浄材料)でパージする。
- 加熱筒を分解清掃する
などの処置が必要です。
○チョコ停の時○
異常発生や、金型のメンテナンスでチョコ停する場合があると思います。
パージしないで再開すると、オーバーパックやショートが発生する事があります。
後処理が大変ですし、金型の破損にも繋がります。
一旦可塑化装置を後退させて、パージをしましょう。
また、成形スタート時の様な、いきなり練り込み異物が出てくる事は少ないと思います。
パージの目安は、成形機の大きさや、使用している樹脂によって異なりますが、加熱筒内の樹脂を置き換える量をイメージしてパージしましょう。
(ⅱ)樹脂の種類を変える時
○温度帯の同じ樹脂を変える時○
A.加熱筒に入っている材料 | POM(180ー210℃) |
B.置き換えしたい材料 | PP(160-250℃) |
上図の通り、POMからPPに置き換える時の解説です。
①加熱筒温度を190℃の状態で、POMがなくなるまでパージする。
②加熱筒を190℃のままで、PPを投入しパージングする。
最初は背圧を高めにかけて(スクリューが前進限で回転する状態)、PPを流していきます。
ノズル先端から出てくる樹脂の色やにおいなどPPに置き換わってきたと判断できます。
その時点で、背圧を低くして、30mmくらいまで計量して射出するパージに切り替えます。
計量射出のパージを数回繰り返します。
これで加熱筒の中の樹脂はPPに置き換わりました。
③加熱筒の温度をPPの成形温度に変更する。
ポイント
同じ温度帯の樹脂変えは、簡単ですね。しかし、ナチュラルカラーでは簡単でも、これに色が付いたり、特殊な材料ですと大変です。
パージだけでは、前の材料が残ってしまう時は、加熱筒の分解清掃をしましょう。
工程的には面倒だなぁと思うかもしれませんが、不良の発生リスク、流出リスクを考えたら分解清掃をやりましょう。
慣れてコツをつかめば、悩むことではありません。
○温度帯の違う樹脂を変える時○
A.加熱筒に入っている樹脂 | PC(280-320℃) |
B.置き換えしたい樹脂 | ABS(190-250℃) |
上図の通り、PCからABSに置き換える時の解説です。
①加熱筒温度を300℃の状態で、PCをなくなるまでパージします。
②溶融温度の違いを補うため、温度設定の許容範囲をカバーできる材料PEを投入します。
通常、ポリエチレン(PE)、一般用ポリスチレン(GPPS)などが一般的です。
③加熱筒内がPEに置き換わったら、加熱筒温度をABSの成形温度に変更します。
④ABSを投入し、加熱筒内をPEがなくなるまでパージする。
ポイント
どの樹脂変えも基本は、最初、背圧を高めにし、スクリュー前進限で低回転させ、スクリュー部の樹脂をパージします。その後、背圧を低くし、計量値を30mmくらいに設定し計量と射出をくりかえし、スクリュー先端の樹脂をパージします。逆止リングを動かすことがポイントです。
材料変えの材料廃棄ロスは、できるだけ少なくしたいです。
高価な材料だと1kg当たり3,000円以上するものもあります。
今回の様な、温度帯の違う樹脂換えは、安価なPEを使用する事で、なるべくパージロスを晴らしながら、パージ費用削減を意識しましょう。