結論:射出成形の射出速度とは
- 射出速度とは、計量完了位置からVP切り換え位置まで、金型に樹脂を充填する速度です。充填の約90%を速度で管理します。
- まずは1次圧が十分か。1次圧が足りないと速度が立たず、設定速度をいくら上げても実速は上がりません。
- スクリュー位置と充填位置を重ねてイメージし、速度を多段で切り替えます。
- 速度は、あくまで設定するパラメータの1つ。必要以上に速くしない、薄肉部を無理に速度で押しこまない。樹脂温度・金型温度・ガスベントも一緒に考えます。
1.射出速度とは
射出成形における射出速度とは、金型に充填する速度です。計量完了位置からVP切り換え位置までの充填速度を射出速度といいます。保圧時の充填速度の設定もしますが、保圧は圧力でコントロールします。
| 射出速度 | 特徴 |
|---|---|
| 速い | 製品が過充填になり、バリやオーバーパックになります。リブやボスでエアを巻きこみ、シルバーや気泡も出やすくなります。 |
| 遅い | 充填途中で失速し湯ジワや、ショートします。 |
1-1.保圧速度とは
保圧に切り替わったあとにも、スクリューが進む速さの上限(保圧速度)を設定します。ただし、保圧の工程は圧力で管理するのが基本です。保圧速度は、保圧中にスクリューが急に進みすぎないようにするための設定です。
1-2.射出速度の計算
射出速度(mm/s)は、スクリューが前に進む速さです。1秒間に金型へ送りこむ樹脂の量(射出率)は、次のように計算できます。
射出率(cm³/s)= スクリューの断面積(cm²)× 射出速度(cm/s)
同じ射出速度でも、スクリューの径が大きい機械ほど、たくさんの樹脂が流れます。ほかの機械へ条件を移すときは、速度の数字だけでなく射出率で考えましょう。
2.まずは1次圧が十分か
射出速度を設定する前に、1次圧(射出圧力)が十分かを確かめます。1次圧が足りないと速度が立たず、設定速度をいくら上げても、実速は上がりません。設定速度に対して実速が出ているか、モニターや波形で確認しましょう。
▶ くわしくは:射出圧力(1次圧)とは?頭打ち・設定速度と実速
3.スクリュー位置と充填位置を重ねて、速度を多段で切り替える
射出工程(充填初期〜90%位まで)は、速度で管理するのが一般的です。金型内の形状によって、必要な速度は変わります。形状に合わせて多段的に、射出速度を設定していきます。
ポイントは、流れの先端(フローフロント)を意識することです。金型が閉じた状態では、製品部は空洞です。スクリューの位置と、樹脂がいま金型のどこまで充填されているかを重ねて想像し、場所ごとに速度を切り替えます。

成形品の状態を観察しながら、1〜5段階の速度変化を付けて最善をつめていきます。
3-1.射出速度の設定 例
| 場所・症状 | 速度 |
|---|---|
| ゲート通過 | ゆっくり充填 |
| 肉が薄い形状(流れにくい) | 素早い速度が必要(ただし無理に押しこまない/5章) |
| ガス逃げの悪い箇所 | ゆっくり充填し、ガスを上手く逃がす |
| 流れが悪く湯ジワ不良 | 速度を上げる |
| ボスやリブで分岐して、また合流する箇所の気泡不良 | 速度を遅くする |

4.速度を必要以上に速くしない
金型に入った樹脂は、金型に触れた瞬間から固まっていきます。その固まった層の中心を、あとから来た樹脂が押し広げながら充填していきます。この流れ方をファウンテンフローといいます。
必要以上に速くすると、リブやボスなどの障害物のところでエアを巻きこみ、シルバーや気泡になります。
▶ 樹脂の流れ方は:【射出成形】樹脂の流れ方 ファウンテンフロー 金型内不良ポイントと対策
5.薄肉部は、無理に速度で押しこまない
薄肉部は流れにくいので、速度を上げたくなります。でも、無理に速度で押しこむのは禁物です。
- ガスベントを強化する(ガスが逃げれば、樹脂は入る)
- 金型温度を上げる(固まるのを遅らせる)
- 樹脂温度を上げる(流れやすくする)
このように、多角的な視野で考えましょう。
6.速度はパラメータの1つ|複合的な管理をめざす
射出速度は、あくまで設定するパラメータの1つです。樹脂温度・金型温度も一緒に考えます。
- 金型の形状、ガスの抜け具合はどうか
- 充填しやすさは、もともと流れにくい形なのか、それとも設定によって流れにくくしているのか
複合的な管理をめざすには、まず知っておくことが重要です。どの条件が何に効いているのかがわかれば、迷わず調整できます。
7.射出速度と成形不良|よくあるトラブルと対策
7-1.シルバー
射出速度が速いと、製品表面や、リブやボス周辺にシルバーが発生します。充填時のガス巻き込み、ガス抜けを意識して射出速度を調整しましょう。事象箇所の射出速度をピンポイントで下げることで改善します。射出速度を下げることで、流動末端の流れが悪くなるので、ショート、湯ジワに気をつけましょう。
7-2.ウェルドライン
射出速度が速いと、袋小路や、ボスの周辺(流動が二手に別れた後の合流地点)において、ウェルドラインが強く出ることがあります。ガス抜けに対して射出速度が速いことが原因です。ウェルド発生箇所の射出速度を下げることで改善します。ゆっくり流してガス抜けを良くするイメージです。または、分岐から合流までに時間がかかっている時は、射出速度を速めて固化する前に合流させることも有効です。
7-3.速度を上げても変わらない
1次圧の頭打ちを疑います(2章)。薄肉部なら、ガスベント・金型温度・樹脂温度も見直します(5章)。
8.射出速度は技能検定でも大事
射出速度・多段制御・VP切り換えは、技能検定 射出成形作業の学科試験「成形加工法」の範囲です。実技試験でも、ショートショットで充填を見ながら速度を決めます。
まとめ
- 射出速度は、充填の約90%を管理する速度。まずは1次圧が十分か
- スクリュー位置と充填位置を重ねて、速度を多段で切り替える
- 必要以上に速くしない。リブ・ボスでエアを巻きこみ、シルバー・気泡に
- 薄肉部は無理に押しこまない。ガスベント・金型温度・樹脂温度で考える
- 速度はパラメータの1つ。複合的な管理をめざす
全力で応援しています。
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