射出成形は、ガス逃げとの戦い
射出成形加工において、金型の出来は、成形性、不良率、金型の耐久度まで影響を及ぼします。特に、ガス逃げの良し悪しがポイントです。
本日は、ガス逃げ不良の事例紹介と対処方法をご紹介します。
１．ガス逃げ不良の原因
ガス逃げが悪くなると、樹脂は充填し辛くなり、その箇所はガスショート・ガス焼けしたり、ウェルドラインが強くでたりします。
代表的なガス逃げ不良原因は３選
①ガスベントの詰まり
パーティングライン（金型のキャビコア合わせ面）に沿ってガス逃げが彫られていますが、そのガス逃げ道がガスヤニや樹脂のカスで詰まっていくとガス逃げ不良が起こります。
各日、各勤務毎な金型の清掃とメンテナンスを行うことで、ガスベントの詰まりをリセットすることができます。数万ショット毎に金型を分解清掃（オーバーホール）することで、未然に防ぐことが可能になります。
②金型のつぶれ
金型は、高圧で型締めされ、数十万ショットも成形されます。累計生産ショット数が増えていくことで、金型の合わせ面が劣化消耗していき、ガスベントが潰れていきます。こういった潰れは、ガスベントの彫り直しが有効です。
③袋小路
製品のデザインや機能を優先することで、ガス逃げの悪い部分ができてしまいます。金型に充填される時、二手に分かれた樹脂が再び集まる箇所や、行き止まりや袋小路の箇所です。こういったガス逃げ不良には、ガス逃げ用のEJピンを追加したり、多孔質の入れ子（金属自体から排気できる）に置換することが有効です。
２．ガス逃げの対処方法の紹介
「金型を掃除しましょう」って単純な話ではなく、もう一歩踏み込んだ提案をご紹介します♪
- 他の会社さんはどんな対応してるのか知りたい
- 清掃頻度を長くしたい
- 付け焼刃でなく、恒久対策できないのか など
掲示板と連動した、みんなの対処事例をまとめていくよ。
掲示板はコチラから
①ガストース プラモール精工
ガストース（プラモール精工）のガス抜き対策商品です。
ガストース（公式サイトから転用）
射出成形のショートショット、バリ、ガス焼けなどの課題に対して効果的な解決策となる製品です。以下にガストースのメリットをまとめます。
- 品質向上
ガストースの導入により、品質の向上が期待できます。低圧成形が可能となり、バリが小さくなります。また、キャビティ内のガスベント詰まりが少なくなり、ショートショットを防ぐことができます。さらに、製品のガス焼け防止やヒケの削減にも効果があります。 - コスト削減
ガストースの導入により、コストの削減が期待できます。不良率の低下により、検査工数が減少し、原価を低減することができます。また、コアピンの破損を防ぐことでメンテナンス工数を削減し、パージや捨てショットの量を減らすことで材料費を節約することができます。 - 生産性の向上
ガストースの導入により、生産性の向上が期待できます。不良率の改善により検査工数が減少し、生産性が向上します。また、チョコ停（連続成形の停止）の要因を除去することで生産性を向上させます。さらに、金型の汚れが減り、メンテナンスの回数を減らすことで生産性を向上させることができます。条件幅が広がり、歩留りが良くなるため、生産計画の変更が少なくなり納期の厳守が可能となります。
ガストースの構造は、エジェクタピンやコアピンなどにガスベント（エアーベント）機能が備わっており、樹脂の流動性に応じて0.005～0.05mm幅のガスベントを作ることができます。そのため、さまざまな樹脂に対応可能です。
ガストース ガス焼け事象（公式サイトから転用）
ガストース ガス焼け改善（公式サイトから転用）
プラモール精工
ガストース
先端に細かい穴が開いていて、ガスが抜けるよ！
金型内のガス逃げの悪い箇所にピンポイントで設置することで、
ガスショート、ウェルド、湯ジワを改善するよ✨#インターモールド pic.twitter.com/UiBCI5SPpo— プラ太郎♻️特級プラスチック成形技能士 (射出成形) (@PlasticFan2017) April 21, 2023
②エコベント
ECOVENT社はガス抜き入れ子を開発しています。
○エコベントフラット
ガス抜き入れ子を設置して起き、充填時のガスを逃がしつつ、樹脂の流れで倒しこむ。
○エコウィンド
ランナーや、製品面の流動末端に設置するガス抜き入れ子。ガスを排気しつつ、充填した樹脂でシールする仕組みです。
出典：ECOVENT公式ウェブサイト
下記ツイートで紹介したケンモールドさんは販売代理店。
ケンモールドサービス@kenmouldsservic
エコベント フラット
ガス抜き機構
ガスが抜けた後に
樹脂で入れ子がフラットになる。☑ガスベントでは抜ききれないガス
☑ガスヤケにピンポイント
☑成形条件では調整がきかない時#高機能素材Week #プラスチックジャパン pic.twitter.com/vj6Kh10zeH— プラ太郎♻️特級プラスチック成形技能士 (射出成形) (@PlasticFan2017) December 7, 2022
