射出成形工場における
機械・装置の点検について、点検の種類と目的、点検ポイントを解説します。
こんな方におすすめ
- 射出成形工場の点検箇所は?
- どんなところをどんな頻度で点検するの?
- 自分たちでできる点検と、業者さんに任せる点検の違いは?
射出成形工場では、なんで点検が必要なの?
点検の大きな目的は、しっかりと生産を管理するためです。
設備・装置の状態が正常か、壊れていないかを点検することが、安定した生産に繋がります。
- 設備や装置部品の劣化
- 水質の悪化
- グリースの循環不足 など
様々な要因により生産能力が低下したり、ばらついたりします。
射出成形工場において、下記の3種類の点検が特に重要です。
・始業前点検(生産開始前)
・日常点検(毎日、毎勤務)
・定期点検(四半期、半年、1年)
射出成形工場の点検 種類と内容
射出成形工場の設備(射出成形機、金型、取り出し機、金型温調機、乾燥機、ローダーなど)について、点検内容を解説していきます。
1.始業前点検(生産開始前)
生産開始前に、スタートできるかを点検します。
目視による点検が基本です。
【点検項目】
- 射出成形機・取り出し機
・準備モードで射出台の前後進、型開閉動作、パージ作業をし、不具合、異音、異臭の確認。
・成形条件が間違っていないか。 - 金型・金型温調機
・金型温度が設定温度になっているか。
・すべてのコックが開いているか。
・水漏れや油漏れがないか。 - 取出し機
・エアー漏れがないか。チャック開閉動作は問題ないか。吸着圧は立つか。油のしたたりがないか。
・取り出し条件に間違いはないか。(低速動作で1サイクルを手動確認) - 乾燥機・ローダー
・設定温度で制御されているか。
・ローダーが、ONになっているか。
【点検ポイント】
・成形条件、取り出し条件メモリの呼び間違えは、金型破損に繋がります。
・ローダーのスイッチ入れ忘れや、金型温調機のコック開け忘れなど、スタート時によくあるトラブルです。
・作業開始前点検表があればその点検項目を☑して漏れのないことを確認します。ない場合は、最後に一回りして、忘れていないかWチェックがポイントです。
・焦らずにしっかりと確認しましょう。
2.日常点検(毎日、毎勤務)
生産中に設備・装置が適正に稼働しているか点検します。
目視による点検が基本です。機械・装置の日常点検表の点検項目を基に点検します。
【点検項目】
- 射出成形機・取り出し機
・異音、異臭、グリスタンクの残量、射出台やトグル、タイバーのグリスの潤滑状態。
・油圧機は、作動油量と温度。
・性能低下により1サイクルが遅れていないか。 - 金型
・水漏れ、油漏れ、異音、異臭。
・スライドやネジ抜き装置の動作確認。 - 金型温調機・ドライヤー・ローダーなど
・稼働しているか。異音異臭がないか。
・水、油、原料の漏れがないか。
【点検ポイント】
・日常点検表の点検項目に則って点検していきましょう。
・稼働しているからOKではなく、計器を確認して、適正数値の範囲内で稼働しているかがポイントです。
・毎日のことになるので、「大丈夫だろう。」と大雑把になりがちです。
・また、点検表に☑を書き込むだけになってしまっては、何の意味もありません。
・日常点検は、大きなトラブルを未然に防ぐための保険のようなものです。日々の積み重ねが大事になります。
3.定期点検(4半期、半年、一年)
停止している状態の機械が正常か確認していきます。
機械のVベルトの張力や、オイルの潤滑状況など、機械が停止している時に、機械の状態が健全か確認するために点検します。定期点検表の点検項目を基に点検します。
必要に応じて専門業者の校正や、張力テスターなどの点検器具を用いて点検・診断します。
【点検項目】
- 射出成形機
・各軸Vベルトの張力、加熱筒ヒーターセンサーの校正、ヒーターマグネットリレーの接点の点検。
・制御盤や各モーターの冷却ファン、条件メモリのバッテリー
・スクリューの摩耗確認(適宜) - 金型
・オーバーホール(ばらして清掃、点検、消耗部品の交換) - 金型温調機、ドライヤー、ローダー
・マグネットリレーの接点の点検。フィルターの清掃。
【点検ポイント】
・定期点検表の点検項目を基に、抜け漏れの内容に点検していきます。
・定期点検は、自分たちだけではできない点検が多いため、しっかりと計画を立てることが重要です。
・自分たちでできるもの、他部署に依頼するもの、外部機関に依頼するものをきちんと分けて、実施していきます。
・特にヒーターのマグネットリレーは、異常が出る前に定期で交換がおすすめです。量産稼働中にヒータートラブルで停止しては、稼働率、歩留まり率、不良率に大きく影響します。