製造業に限っての話ではございませんが、お客様に迷惑をかけた時に書くのが「対策書」です。
射出成形工場では、主として「製品の品質不良クレーム」の対策書が多いのではないでしょうか。
- なぜ不良が発生したのか?
- なぜ流出したのか?
- どうすれば再発防止できるか?
- 効果の検証は? を1枚のレポートにまとめます。
とはいうものの、、、
- 何から書いたらいいのかわからない。
- どうやってまとめたらいいの?
そんな困ったを解決致します。
射出成形に特化した「対策書」の書き方の説明と5つのポイントをご紹介いたします。
目次
1.「対策書」とは
お客様方にて、「成形不良」や「不手際」が発見された時に、原因調査と再発防止対策をまとめたレポートのことです。
お客様に「トラブルを対処する能力」と「プレゼン能力」を同時に試される機会ですね。
書き方や、決まり事などはありませんが、対策する上で【必要な情報】は盛り込まないとまとめられません。
次にポイントを上げて説明していきます。
2.「対策書」の基本 3つの重要ポイント
(ⅰ)誰が読んでもわかる様に
まずは、シンプルで、道筋が通っていて、わかりやすい内容であること。
【よくありがちなミス】は下記の通りです。
- 専門用語が多い
- 無駄な情報がある
- 文章が長い
- ストーリーが見えない など。
書いている自分では理解できても、相手に伝えるのはすごく難しいことです。簡単な表現でポイントを押さえる様にします。
「嫁さんが読んでも理解できるレベル」のわかりやすさをイメージしましょう。
(ⅱ)徹底的に「現実」を調査する
「不良事象」に対して、考えうる全ての要因を洗い出して、調査します。
ポイントは、「○○だろう。○○かもしれない。」の様な【推測や理論】ではなく、「現場」に赴き、「現物」を見て触って聞いて「現実」を知ることが重要です。
この【現実】を並べて行くことで、自然と「真の要因」が明らかになっていきます。
絵空事の様な、適当な推測では、「真の要因」はわかりません。
しっかりと「現実」を調査することで、初めて対策が打てるのです。
3現主義の重要性はこちらの記事でまとめております。
(ⅲ)完結させる
対策書内で、「いかに相手がわかる様にまとめるか。」です。
- 事象の要因を調査
- 対策案を実施
- その検証結果を判定 です。
つまり、1枚の対策書で完結させなくてはいけません。
例外として、検証に時間がかかるものは、期日を決めて仮で完結させます。
3.射出成形【特化】「対策書」の書き方 5ステップ
「射出成形」で一番多く対策書を書くのは、「成形品の品質不良クレーム」に対してです。
- 成形品の外観不良、変形など
- 練り込み異物や、金属片の混入
- 員数過多・不足 などです。
ここからいよいよ本題です。
5つの項目に分けて書いていきます。
- 事象品の確認
- 工程確認結果
- 発生原因・流出原因
- 発生対策・流出対策
- 検証結果
1つづつ解説していきます。
(ⅰ)事象品の確認
客先で発見された【事象】確認をする。
事象品からわかる情報(事実)を全て上げること。成形品の品質不良は、現物確認が基本です。
・基本情報の確認(製品名、型番、色調、サイズ、製造Lotなど)
・不良事象の詳細確認。(確認方法:目視、マイクロスコープなど)
この事象品の確認が最重要です。しっかりと調査をしましょう。
例)
事象品を確認致しました。基本情報は下記の通りです。
製品名 | 計量カップ本体 |
型番 | 2 |
色調 | NC |
サイズ | ー |
製造Lot | 181110-箱No.10 |
不良事象をマイクロスコープで確認したところ、製品中央部に、角のとがった黒色の練り込み異物(0.3㎟が3点)がありました。
返品されました当該Lot中の事象は、2個/1,000個でした。
(ⅱ)工程確認結果
事象品の製造に携わった全ての工程の確認結果を調べます。
- 事象品の製造記録、製造した設備の点検記録など帳票類を確認。
- 4M「人」「機械」「原料」「方法」の確認。
- システム内のトラブルや、条件の変更点があったかどうかを確認。
- それぞれに調査した工程確認結果が、事象に起因するか【判定】する。
この段階で、きっちり調査をしていくことで、【原因】を探っていきます。
例)
確認項目 | 確認結果 | 判定 | |
1 | 生産日報 | 事象に起因する問題はございません。 | ○ |
2 | 成形機 | 事象に起因する問題はございません。 | ○ |
3 | 金型 | 金型を分解確認したところ、ホットランナー内(バルブ周辺)に樹脂の焼け有り。
(前回の分解清掃から実働180日間) |
× |
4 | 工程検査 | 定時のショットサンプル検査では問題ありませんでした。 | ○ |
(ⅲ)原因
(ⅱ)工程確認結果を受けて、発生原因と流出原因をまとめます。
・「発生原因」と「流出原因」にわけて、考えます。
- 「発生原因」とは、「事象」が起こった原因
- 「流出原因」とは、「事象」がお客様方に流出した原因。
例)
発生原因:金型ホットランナー部で炭化した樹脂が、剥がれ落ち製品に練り込まれたことが原因です。分解清掃期間の定めもありませんでした。
流出原因:発生頻度が低く、工程検査(定時ショットサンプルの検査)では検出できませんでした。
(ⅳ)対策
(ⅲ)原因を受けて、対策案と実施事項をまとめます。
「発生対策」と「流出対策」に分けて対策します。
- 「原因」に対しての処置
- 手順や工程の変更
- 教育訓練の実施
- 帳票類の改定 などが対策内容になります。またその記録を添付します。
例)
発生対策:
- 金型ホットランナー内バルブ部を分解清掃しました。'18.11.18実施済み。
- 金型清掃手順を改定(分解清掃期間150日間、「金型メンテナンス書」に記録することを追記)しました。'18.11.18実施済み。「資料1:金型清掃手順書参照」
- 作業担当者へ教育訓練実施済み。'18.11.18済み。「資料2:教育訓練(金型清掃手順書改定教育)参照」
流出対策:
工程内検査(抜き取り検査)で検出は難しいため、発生対策を確実に遂行致します。
(ⅴ)検証
(ⅳ)で行った対策の効果を検証をします。
「不良事象」が対策をした結果、再発防止できました。を検証します。
(例)
金型分解清掃後の成形品を全数検査し、事象不良は発生しませんでした。
成形ロット | 検査数(個) | 不良数(個) | 不良率(%) | 判定 |
181118 | 1,000 | 0 | 0 | ○ |
181119 | 1,000 | 0 | 0 | ○ |
181120 | 1,000 | 0 | 0 | ○ |
4.まとめ
射出成形【特化】「対策書」の書き方
3つの重要ポイント
- シンプルにわかりやすく
- 徹底的に「現実」調査をする
- 完結させる
対策書の書き方 5ステップ
- 事象の確認
- 工程確認
- 原因
- 対策
- 検証