射出成形工場の業務は多岐にわたります。製造予定と納期を管理する業務を、生産管理といいます。
会社の規模により専用の部署があったり、現場の技能士が兼務することがあります。
注文の最適な工程管理に必要なポイント
- 全体の流れ
- 対応成形機の選定
- 製品作成にかかる時間・人員
- 在庫 などで
射出成形のものづくりと、工場の流れを広く把握する力が必要です。
本日は、射出成形の最適化「生産管理」のイロハをシェアしていきます。
1.生産管理とは
お客様からのを、納期に間に合う様に製造または調整すること。
射出成形における「生産管理」の業務は下記の通りです。
- 受注
- 材料や資材の仕入れ
- 生産計画
- 生産指示
- 出来高確認
- 納期に間に合う様に出荷指示 など
お客様との日程調整や、予定と出来高を追う業務です。
2.なぜ技能士は【生産管理】が苦手なのか?
技能士の仕事は多岐にわたりますが、メインの仕事は、金型準備から製造(立ち上げや条件調整など)です。
製造現場の技能士はプロフェッショナルな職人気質が多いです。
お客様とのやり取りの様なコミュニケーション、生産計画や出来高管理などのマネジメント業務は慣れていないいうのが最大の要因です。
また、「成形課」の他に「生産管理課」がある会社では、そもそも技能士が生産管理業務に携わる必要がない事も考えられます。
3.技能士に生産管理のノウハウは必要か?
射出成形のプロフェッショナルの「技能士」に、生産管理のノウハウや能力は絶対に必要です。
技能士として業務をこなしていくと、不良率や歩留りなどの数字で勝負しなきゃいけない場合がでてきます。
例えば、製造中にトラブルが発生しました。【合格品】を【必要個数】、【納期】に間に合わせなくてはいけません。材料の残り量や不良率を加味し、生産しなくてはいけません。また、他部門へのアナウンスや納期調整も必要になるでしょう。
「生産指示の通りに立ち上げればいいや。」ではなく、その先まで意識してみましょう。
[ad]
4.生産管理 入門
【品質】【コスト】【納期】を意識して【管理】するには、数字に強くなる必要があります。
生産管理の入門として、数字に強くなりましょう。とはいえ何から始めれば良いか困惑しますよね。
まずは自分が立ち上げた製品が、何個生産できて、いくら売り上げてるかを計算してみましょう。
(ⅰ)出来高の計算
製品Aが、1日に何個生産できるかを計算してみましょう。
1サイクル(sec) | 取数(個/shot) | |
製品A | 30 | 2 |
【考え方】
1日を秒に変換し、1サイクルで割ることで、ショット数(shot/日)を導き出し、取数(個/shot)をかけます。
出来高(個/日)=86,400(秒)÷30(sec)×2(個/shot)=5,760となります。
実際は、異常停止や金型メンテナンスなどの為100%の計画は無理です。98%程度を想定しましょう。
出来高(個/日)=5,760(個/日)×98%=5,644となります。
[ad]
(ⅱ)売上の計算
製品Aの1日当たりの売上を計算してみましょう。
1サイクル(sec) | 取数(個/shot) | 製品単価(円/個) | |
製品A | 30 | 2 | 15 |
【考え方】
出来高(個/日)に製品単価(円/個)をかけると、売上になります。
売上(円/日)=5,760(個/日)×15(円/個)=86,400です。
[ad]
(ⅲ)成形加工費(時間チャージ)の計算
1サイクル(sec) | 取数(個/shot) | 製品単価(円/個) | 原料単価(円/kg) | 製品重量(g/個) | |
製品A | 30 | 2 | 15 | 200 | 30 |
成形加工費(時間チャージ)とは、1時間当たりの売上から原料費を引いた金額です。
① 1時間あたりの売上
出来高(円/日)を24時間で割ります。
1時間当たりの売上(円/時間)=86,400(円/日)÷24=3,600
② 1時間当たり原料費
【考え方】
○製品1個の原料費(円/個)を求める
製品1個の原料費は、原料単価(円/kg)を「g単位」に変換して、製品重量(g/個)にかけます。
製品1個の原料費(円/個)=0.2(円/g)×30(g)=6
○1時間当たりの生産数(個/時間)、原料費(円/時間)を求める。
1時間当たりの生産数(個/時間)=3600(sec)÷30(sec)×2(個)=240個
1時間当たりの原料費(円/時間)=240(個/時間)×6(円/個)=1,440
③ ①-②で、成形加工費(時間チャージ)を求める。
成形加工費(時間チャージ)(円/時間)=3,600-1,440=2,160となります。
1時間当たり原料費を引いた売り上げが2,160円というわけですね。
【製品単価】【出来高】【原料費】など様々な要素がからんでいます。
この成形加工費(時間チャージ)は、「見積り作成」や「収益率」に計算などの基になるデータです。射出成形業にとって重要なキーワードです。この機会に覚えてしまいましょう。