【新人】【中堅】向けの記事になります。
「成形品」にはそれぞれ、お客様と取り決めた「品質規格」があります。
「品質規格」の【限度内】を「良品」、【限度外】を「不良品」と呼びます。
一生懸命作った成形品が「不良品」では、もちろん買ってもらえません。
「注文個数の良品を期日までに作る事」が、製造業の基本です。
この基本の積み重ねが、「信頼」です。
お客様に「また頼むよ!」と言って頂くには、日頃の弛まぬ努力が必要です。
「品質」と「コスト」の折り合いを上手く付けながら、品質マネジメントをしていかなければなりません。
さて、本日のテーマは「練り込み異物」です。今日からできる確認ポイント5つの原因と対策をまとめました。
目次
1.「練り込み異物」とは
成形品に、プラスチック原料以外の「異物」が練り込まれている不良事象です。
2.「練り込み異物」の種類
コンタミ
原料と一緒にゴミが混入して成形品に練り込まれて出てきてしまう事象です。
黒点
加熱筒内シリンダーに原料が炭化した焼き付きが蓄積し剥がれ落ちて成形品に練り込まれる事象です。
下図は、加熱筒シリンダーから剥がれ落ちた炭化物です。
金属片
成形機、粉砕機、取出し機、コンベアなど生産工程のどこかで金属部品が脱落してしまうことがあります。
ランナーや外観不良品は粉砕して再利用するので、原料に混入してしまいます。
下図は、金属片が加熱筒に混入し、逆止リングに引っかかり、成形できなくなったため、スクリュー分解清掃した時のものです。砕けたボルトが挟まっていました。
3.「練り込み異物」は不良発生率ワースト1位
射出成形の不良は「外観不良」「寸法不良」など様々です。
なかでも不良発生率のワースト1位は「練り込み異物」と言われています。
4.ゼロにはできません
「練り込み異物」に発生は絶対にゼロにはできません。
だからと言って、「練り込み異物はしょうがない。」ではいつまで経っても減りません。「0にする為に全ての策を尽くし、さらに改善し続ける」がマインドです。製造業における永遠不屈のテーマですね。
5.練り込み異物 5つの原因と対策
環境と4M(原料、機械、人、方法)の5つに分けて、原因と対策を解説していきます。
ⅰ 環境
保管場所や保管期間
雨風埃まみれ、長期保管の原料袋には「ゴミ」がたくさん付着しています
そのまま投入すれば、全て成形品に「コンタミ」として出てきます。
対策:原料投入の基本は、「原料袋のごみを除去する」です。エアーブローとコロコロ粘着シートを使い除去しましょう。
原料タンク・ホッパーの蓋が開けっぱなし
当然ゴミが入ってしまいます。面倒くさがって開けっぱなしにしている様なら、練り込みはいつまで経ってもなくなりません。後日、返品された不良の「選別」と天秤にかけてみてください。圧倒的に「選別」の方が面倒ですし、お金になりません。
対策:投入する毎に開け閉めしましょう。
ⅱ 原料
原料自体【ペレット】にゴミが練り込まれている。
特にカラーペレットは、着色工程が増える分、ゴミの混入が増えます。
対策:バージン材には練り込まれていないだろうという先入観を捨て、原料はロットごとにペレットを抜取検査しましょう。成形する前に発見できれば、救済措置が取ってもらえますね。
ⅲ 機械・設備
加熱筒シリンダーに炭化した焼き付きが剥がれ落ちる
「練り込み異物」のベスト2のうちの1つです。原因は、原料の種類や添加剤などの影響や、滞留時間が長いことなど様々です。一度温度を下げてしまうと、剥がれてしまうことがあります。
◇パージ剤を使おう
パージ剤を使用して加熱筒内の炭化物をそぎ取る。ただし、今度はパージ剤がシリンダーに残って悪さをすることもあります。パージ剤使用後は、次の原料でしっかり抜ききって下さい。
◇スクリュー分解清掃をしよう
スクリューを抜いて清掃しましょう。シリンダー清掃はコツさえつかめば簡単です。炭化した焼き付きは、パージ剤では完璧には除去できません。ばらしてスクリュー、3点セット、ノズル、ノズルヘッドをガスバーナー、ワイヤーブラシ、青粉、ウエスなどで除去しましょう。
設備の部品が脱落し混入
ローダー・混合機・取り出し機などの、ゴムやフェルトのパッキンや、ボルト・ナット・ヒンジなどの止め具は、経年劣化や、機械の振動などにより脱落してしまいます。
◇定期点検をしよう
設備は壊れる前、止まる前に点検整備が基本です。定期点検で未然に防ぎましょう。
◇マグネットセパレーターを使用する
成形機上のホッパー、輸送ホース、原料タンク(特に粉砕材側)にマグネットセパレーターを投入して金属片を除去しましょう。
ⅳ 人
作業者の身だしなみ
原料投入・粉砕作業を担当している作業者が身に付けているものを誤って投入してしまう。
よくあるのが胸ポケットのボールペンや、袖のボタンです。
対策:原料投入・粉砕作業を担当する作業者は、混入のおそれがある服装を避ける。落ちる様な物は最初から外しておく。
Ⅴ 方法
①練り込み異物の検査で見逃してしまう
発生原因ではなく、流出原因になります。本来、全数検査をするはずの成形品だったのに、連絡がされていなかったなど適切な工程が実施されないと練り込み異物は、止められません。
対策:検査工程を見直し、根本の原因を追究しましょう。
6.まとめ
練り込み異物は、成形品に異物が練り込まれている事象です。
- 「コンタミ」とは、ごみが混ざってしまった事象
- 「黒点」とは、加熱筒ないにて単価蓄積した焼き付きが剥がれ落ちて練り込まれる事象。
練り込み異物は、発生率ワースト1位の不良です。発生をゼロにすることは難しく、意識して日々改善し続けることで、少しづつ削減できる事象です。
練り込み異物の発生原因は様々です。「環境と4M(原料、機械、人、方法)」にわけ、1づづつ対策していきましょう。地道に1歩1歩が最短ルートです。