ごみのリサイクル方法の1つであるサーマルリサイクルについて。
日本のリサイクルの多くはサーマルリサイクルが使われています。では、実際にサーマルリサイクルはどれぐらいの割合でリサイクルとして使われているのでしょうか?
本記事では、そんなサーマルリサイクルの割合についてご紹介します。
目次
1.サーマルリサイクルとは
まずはサーマルリサイクルについて説明していきたいと思います。
サーマルリサイクルとは、廃プラスチックを熱して、それを原材料にし発電などのエネルギーに転換するという、「プラスチックリサイクル方法の1つ」です。
サーマルリサイクルは、廃プラを燃やした熱を再利用する方法です。
「サーマル」とは、英語で「熱」を意味する単語になり、「リサイクル」は回収や再生を意味する単語となっています。
ゆえに、サーマルリサイクルとは「熱回収・再生」という意味になります。他にも、エネルギー回収と呼ばれることもあります。
回収された熱(エネルギー)は主に、発電や様々な施設の暖房、施設への温水供給などに使われています。
廃棄物を燃やして処理することで、完全に分別することができない・分別が困難な廃棄物でも有効活用することができたり、火力発電に必要である石炭や石油などの天然資源の節約、リサイクル施設の設備投資が抑えられるなどのメリットがサーマルリサイクルにはあります。
サーマルリサイクルのメリット
- 完全に分別していない廃プラでも再利用
- 火力発電に使用する石炭や石油の使用量を削減
- リサイクル施設の設備投資が抑えられる
(ケミカルリサイクル施設は高額)
2.日本のサーマルリサイクルの割合について
日本におけるプラスチックリサイクル全体のサーマルリサイクルの割合は、60%ほどです。
マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの3つを合わせて、廃プラ総量の85%がリサイクルされ有効活用されています。
3.世界の廃プラリサイクル基準
世界の廃プラリサイクル基準は、「サーマルリサイクルによるリサイクル方法を含まない」数値とされています。
世界基準で比較した時の我が国の廃プラのリサイクル割合は、25%になってしまいます。
日本の全体をみたリサイクル方法の半分以上がサーマルリサイクルに頼っているということになります。
では、なぜリサイクル率全体の中でサーマルリサイクルは除外されてしまっているのでしょうか?それについては以下で解説していきます。
4.サーマルリサイクルがリサイクルとして認められない理由
サーマルリサイクルがリサイクルとして認められない大きな理由は、「熱・エネルギー回収はリサイクルとは言えない」と、海外ではリサイクルとして認められていないのです。
世界基準で考えると、リサイクルの概念に燃焼というものが含まれていないことが大きな理由となります。
日本ではサーマルリサイクル自体はリサイクルという言葉が使われていますし、実際にリサイクル方法である「ケミカルリサイクル・マテリアルリサイクル・サーマルリサイクル」と、サーマルリサイクルも立派なリサイクル方法の1つとして使われています。
実際にサーマルリサイクルによってプラスチック有効利用率も大きく、国民認知としても大勢の人に伝わっています。実数値と異なる情報が蔓延していることで、誤解をしている人が沢山いるなどの理由から、多くの批判の声があるのも事実のようです。
このように、サーマルリサイクルを含めば全体的に高いリサイクル率を日本は誇っていますが、サーマルリサイクルを含まなければ世界基準で見てしまうと非常にリサイクル率が低い国として見られてしまうということが問題になっています。
根本的に日本と世界とのリサイクルに対する取り組みの基準がズレている、また、世界から見ると日本の環境対策は遅れていると評価されてしまうことが一番の原因なのだと言えるでしょう。
ちなみに、先進国間での自由な意見交換や情報交換を通じて経済の成長や貿易の自由化、その他途上国の支援に貢献することを目的としたOECD(経済協力開発機構)の調査では、日本の実リサイクル率は加盟国34カ国中下位、焼却によるリサイクル率は上位という結果になっているそうです。
5.サーマルリサイクルの問題点
上記で解説した通り、世界では熱・エネルギー回収はリサイクルとして認められないということでしたが、それ以外にもサーマルリサイクルには問題点があります。その問題点についても解説していきます。
有害物質の発生
サーマルリサイクルでは、廃棄物を「燃やす」ということをするため、ダイオキシンなどの有害物質が発生してしまいます。
ダイオキシンは、たばこの煙や自動車の排気ガスなど、大気汚染・環境汚染として常に問題とされているものです。もちろん、ごみの焼却や火災などでも発生する物質になるので余計にサーマルリサイクルによる熱処理が問題視されています。
他にも、ダイオキシンは発がん性や生殖毒など、毒性の高い有害物質とも言われています。
プラスチックは800℃以上の熱で燃焼させると、ダイオキシンなどの有害物質の発生を抑えることができると言われていますが、完全に押さえきれるわけではありません。
二酸化炭素の発生
ダイオキシンなどの有害物質以外では、二酸化炭素が発生してしまうという点も問題視されています。大気中に二酸化炭素が増えてしまうと、地球温暖化が進んでしまい、こちらも環境汚染問題の1つと言えます。地球温暖化が進めば、地球の平均気温の上昇をはじめ、異常気象を発生させる原因になったり、海洋生物の生態変化など様々な悪影響をもたらしてしまいます。
また、二酸化炭素が増えてしまうと私たち人間にとっても大きな悪影響をもたらします。二酸化炭素濃度が3~4%を超えると頭痛やめまい、その他吐き気を感じたり、さらに濃度が高まると意識障害である意識消失や失神してしまう危険性などもあります。
この2つの問題点をみるだけでも、どれだけの悪影響がもたらされているのかがわかりますね。
上記のように、サーマルリサイクルによる焼却処理で地球の環境、人間の環境に有害な物質を発生させることが問題として挙げられます。特に地球温暖化は年々進んでいるとされており、プラスチック類のごみの排出を減らしたり、環境の改善対策は世界的に課題となっています。
なお、日本の廃プラスチック排出量は世界でも上位になるほど。これからの取り組みとして、日本も脱プラスチックとして、紙ストローを使用した商品の販売やペットボトルラベルを付けないで販売するなどの取り組みが進んでいます。