こんな方におすすめ
- 射出成形工場における安全管理のポイントを知りたい
- 射出成形の不安全、リスクな何があるの?
- どんな事故・怪我が起こっているのか知りたい
射出成形は、工場で行われるプラスチックの成形法を指します。
射出成形機は、プラスチック原料を溶かして金型に注入し、その後、冷却することによってプラスチックを成形します。
射出成形機には自動取り出し機が付いており、24時間の無人運転をすることも可能です。
また、プラスチック原料の水分を乾燥するための真空乾燥機が付いていることもあります。プラスチックは大量に生産する製品であることから、多数の射出成形機を並べて、製品(成形品)を生産します。さらに、生産された製品をベルトコンベアーによって運ぶ場合もあります。
射出成形工場はたくさんの機械装置が連動している
- 射出成形機
- 原料乾燥機
- 取出し機
- ベルトコンベア など
このように、射出成形の現場では、工場の中に複雑な装置や機械が所狭しと並べられています。
これらの装置や機械に加え、工場内では製造を管理する人や、品質管理をする人々もいます。
本日は、射出成形工場における安全管理のポイントを、事故・怪我の実例を交えて解説していきます。
目次
1.射出成形工場に潜むたくさんのリスク
機械を人が一緒に作業をする射出成形の現場には、様々なリスクがあります。
特に、機械の操作やメンテナンスを行う技術者のリスクが高い傾向です。
射出成形の現場でのリスク
2.労働災害事例(厚生労働省公式サイトから)
厚生労働省の公式サイトには、射出成形機に関する労働災害の事例が載っています。
プラスチックの製造現場では、年間3〜10件の死亡事故と、約900件の労働災害事故が起こっています。
①金型転倒による死亡事故
射出成形機の金型のメンテナンス工程においては、死亡事故もあります。
重さ4tの金型を外した後、金型を起こして立てた状態でピンを抜こうとしたところ、金型が後ろに倒れ、金型を支えていた人の上に倒れ掛かかりました。
この被害に遭った方は、病院に運ばれましたが、亡くなくなりました。
②プラスチック原料の火災事故
射出成形では、火災のリスクも大きいことが知られています。
可燃性の高いプラスチック原料や高温での溶融作業、金属加工機の使用などによって、火災が発生することがあります。
プラスチックは、「指定可燃物−合成樹脂類」に分類されることから、原料の引火には十分な注意が必要です。
指定可燃物とは、火災が起きた際に火災が拡大しやすく、かつ、消火活動が著しく困難になる物質を指します。
指定可燃物を保管する際には、消防署に届出をする必要があります。
③機械操作時の接触事故、巻き込み事故
取り出し機にぶつけることによる流血事故、シリンダーによる火傷、射出成形機の金型の調整作業中の転落、スイッチの誤操作による巻き込みなど、様々な工程において事故が発生しています。
3.安全な現場作りのポイント
安全の基本は、整理整頓です。
このようなリスクを避けて安全にプラスチック製品を製造するために、射出成形の現場では、整理整頓が重要です。リスク回避のための整理整頓では、厚生労働省から以下のような対策が例示されています。
◯射出成形機の上には、製品・工具類をおかない
◯射出成形機上での作業は、上り下りを注意し、足元を固める
◯射出成形機・周辺機器への登り降りには安定した脚立を使用する
◯仕上げ工具は、手前から外へ動かす
◯粉砕機の清掃について、作業手順書を作る
◯動作中の金型には手を触れず、機械停止後に触る
◯動作中、起動の可能性があるエジェクタ(プレート)には触れない
◯取出機の可動エリアに不用意に立ち入らないように、安全柵やロープを設ける
◯二人作業(金型取付時、メンテナンス時、起動時)は責任者を決め、声を掛け合って責任者の指示で行う
◯転倒の危険のある物(金型)を置く場合は倒すか、固縛する
◯玉掛け時はヘルメットを着用する
◯床上に飛散した樹脂・水・油は直ちに拭き取り、除去する(転倒の危険)
◯配線は整理し、カバーし、足を引っかけての転倒を防止する(整理・整頓)
4.安全な現場を作るには
これらの安全対策には、会社によって色々な名前が付けられて実行されています。
例えば、5Sの徹底(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)や、AS2K活動(A:挨拶、S:整理整頓、S:清掃、K:改善)などと称したスローガンが掲げられており、会社は射出成形の現場の安全性を高める努力をしています。
どんなに機械の高性能化が進んでも、最後に機械を管理して製造現場を支えるのは「人」になります。
プラスチックという人間社会に不可欠な製品を生み出し続けるためにも、製造現場での整理整頓を徹底して、製造現場の人を守ることが最も重要です。