目次
射出成形における成形不良
成形不良の種類ごとに、発生要因を3つにわけて詳しく解説しています。
- 成形機・成形条件
- 金型
- 原料
1.ショートショット
溶融した樹脂が金型内で、完全に充填されないまま、冷却固化してしまう事象。
製品の一部が欠けてしまっている不良です。
射出圧力不足や、充填不足が原因です。
成形機・成形条件による要因
成形機・成形条件による要因 | 対策 |
計量不足 | 計量を増やす |
射出圧力が低い | 射出圧力を高める |
射出速度が遅い | 射出速度を上げる |
加熱筒温度が低い | 加熱筒温度を上げる。 |
金型による要因
金型による要因 | 対策 |
ガス逃げ不良 | ガスベントを清掃する |
ゆっくり充填し、ガス逃げを良くする | |
金型温度が低い | 金型温度を上げる |
ゲートバランスが悪い (多点ゲート型) |
ゲートバランスを再設計 |
原料による要因
原料による要因 | 対策 |
原料ロット変更(MFRの違い) ↳流れが悪くなった |
射出圧力を上げる |
射出速度を上げる | |
加熱筒温度を上げる | |
金型温度を上げる |
2.バリ
金型のキャビコアの合わせ面(PL)、入子、エジェクターピン等の隙間に溶融樹脂が流れ込み、製品に余分なマクが張り出る事象。
過充填や、金型の消耗が原因です。
成形機・成形条件による要因
成形機・成形条件による要因 | 対策 |
計量が多い | 計量を減らす |
射出圧力が高い | 射出圧力を下げる |
保圧が高い | 保圧を下げる |
保圧時間が長い | 保圧時間を下げる |
V-P切換え位置が遅い | V-P切換え位置を手前にする |
加熱筒温度が高い | 加熱筒温度を下げる |
型締力不足 | 型締力を上げる |
金型による要因
金型による要因 | 対策 |
金型の合わせが悪い | 合わせの修正 |
金型の合わせ面(PL)の当たり不一致 | 当たり修正 |
摺動部の摩耗 | 痩せた部分を溶接し、加工し直し |
入れ子の摩耗 | 入れ子の修正か再作成 |
金型のメンテナンス不足 | 定期メンテナンスの強化 |
原料による要因
原料による要因 | 対策 |
原料ロット変更(MFRの違い) ↳流れが良くなった |
射出圧力を下げる |
保圧を下げる | |
保圧時間を下げる | |
金型温度を下げる | |
粉砕材の含有量変更 ↳粉砕材の割合が減り、樹脂密度が上がった |
混合比の確認 |
3.ヒケ
ヒケは成形不良の中で最も多く発生し、解決するのはなかなか難しい。
成形品の肉厚部や、流動末端で、製品表面が凹んでしまう事象です。
原因は、体積の収縮です。
【ヒケのメカニズム】
- 樹脂が、金型内に充填される
- 金型に接している表面から固化が始まる(内側は熱いまま)
- プラスチックの収縮する性質により、内側の熱い樹脂が収縮する
- 表面が凹む
【ヒケの対策】
- 収縮分を補う様に、保圧を十分にかける。
- 冷却時間を長くすることで、表面の固化を強くする
成形機・成形条件による要因
成形機・成形条件による要因 | 対策 |
射出圧力が低い | 射出圧力を上げる |
保圧が低い | 保圧を上げる |
保圧時間が短い | 保圧時間を伸ばす |
V-P切換え位置が早い | V-P切換え位置を遅くする |
冷却時間が短い | 冷却時間を伸ばす |
ノズル先端の潰れによる圧力損失 | ノズル先端を確認し、手直しする |
金型による要因
金型による要因 | 対策 |
金型冷却が不均一 ↳金型回路の詰まり |
水管内のエアパージ |
↳水管が不足 | 冷却能力を上げる、水管を追加する |
製品の肉厚が厚い | 肉盗みを追加する |
原料による要因
原料による要因 | 対策 |
結晶性樹脂はヒケやすい | 保圧を上げる |
保圧時間を上げる | |
冷却時間を増やす |
4.シルバーストリーク
製品の表面に樹脂原料の流れ方向にそって、銀白色のすじが発生する事象。
原料の乾燥不足や、ガスの巻き込みが原因です。
成形機・成形条件による要因
- 可塑化不良(背圧が低い)
- 可塑化不良(スクリュウ回転が速すぎ)
- 可塑化不良(滞留時間が長い)
- スクリュウサックバックによるエアの巻き込み
- 射出速度が速い
<対策>
- 可塑化再設定(背圧を上げる)
- 可塑化再設定(スクリュウ回転の適正化)
- 可塑化再設定(成形機シリンダー径の再設定、成形機の再選定)
- スクリュウサックバック量を減らす
- 射出速度を下げる
金型による要因
- ゲート位置が不適切
- コールドスラグ溜まりが小さい
- ガスベント不良
- メンテナンス不良
<対策>
- ゲート位置を再設定
- コールドスラグ溜まりを再設計
- ガスベントの適正配置また再設定
- メンテナンスをする
原料による要因
- 原料の乾燥不足
- 原料の加熱分解
- 再生材使用過多
<対策>
- 原料の適正な予備乾燥
- 原料の滞留時間を加味した原料再設定
- 再生材使用の再設定
5.フローマーク
溶解樹脂が金型内を流れる時、流動性が悪く金型の表面に触れる所と触れない所ができると、
ゲート中心に円輪状の縞模様が発生する事象。
成形機・成形条件による要因
- 射出速度が遅い
- 射出圧力不足
- 保圧が低い
- シリンダー温度が低い
- クッション量が少ない
<対策>
- 射出速度を上げる
- 射出圧力を上げる
- 保圧を上げる
- シリンダー温度を再設定
- クッション量を再設定
金型による要因
- 金型の冷却が不適当
- コールドスラグ溜まりが少ない
- ゲート径が小さい
<対策>
- 金型の冷却回路を再設計
- コールドスラグ溜まりを再設定
- ゲート径を適正化
原料による要因
- 原料の特性
<対策>
- 流れの良い原料に変更
6.黒状(ブラックストリーク)、ヤケ
黒状:製品内に縞模様や黒点が発生する事象。
加熱筒内で滞留する樹脂が炭化したり、外部から入ったゴミが原因です。
ヤケ:金型内のガスベント不良により、逃げ場がなくなったガスが高温高圧になり製品が黒く焼ける事象。
ガスベントの潰れや、袋小路のガス逃げ不良が原因です。
成形機・成形条件による要因
- シリンダーの滞留時間が長い
- 射出圧力が高い
- 射出速度が速い
- シリンダー・スクリュウに傷
<対策>
- シリンダー径を再設定、成形機の再選定
- 射出圧力を低くする
- 射出速度そ遅くする
- シリンダー・スクリュウのメンテナンス、修正
金型による要因
- ガスベント不足
- 金型内に油等の付着
- 金型メンテナンス不足
<対策>
- ガスベントの適正配置、追加
- 金型の点検
- 金型のメンテナンス
原料による要因
- 添加剤等の加熱分解
- 異種材、ゴミの混入
<対策>
- 原料の再検討
- 原料投入ラインの点検
7.ウエルドライン
金型内でピンなどの周囲を流れ、2つ以上に分かれた流れが再び合流した時、樹脂の温度が下がってしまい、完全に融合しないで、糸状の模様が発生する事象。
射出速度が遅いことや、合流部のガス逃げ不良などが原因です。
成形機・成形条件による事象
- 射出速度が遅い
- シリンダー温度が低い
<対策>
- 射出速度を上げる
- シリンダー温度を上げる
金型による事象
- 金型温度が低い
- ゲート形状(多点ゲート)
- ガスベント不良
- 樹脂の流れ方が悪い
<対策>
- 金型温度を上げる
- ゲート形状を再設計
- ガスベントを再設定、追加
- ゲート径やゲート位置を変更し、樹脂の流れ方を再設計
原料による要因
- 樹脂の流れが悪い
<対策>
- 原料の変更(流れの良い樹脂に変更)
8.ソリ、曲がり、ネジレ
金型から取出した時に製品が変形する事象。
キャビコアの温度差による収縮度の違いや、離型トラブルが原因です。
成形機・成形条件による要因
- 射出圧力が高い
- 保圧が高い
- 冷却時間が短い
- シリンダー温度が低い
- 突出し速度が速い
<対策>
- 射出圧力を低くする
- 保圧を低くする
- 冷却時間を伸ばす
- シリンダー温度を上げる
- 突出し速度を低くする
金型による要因
- 離型不良
- 冷却不均一
- 突出し不良
<対策>
- 離型しりくい部分を修正(磨き、抜け勾配の再設定)
- 冷却回路の再設計
- 突出しバランスを再設定
原料による要因
- 原料の収縮率が高い
<対策>
- 原料変更
9.ボイド(真空ボイド)、気泡
ボイド(真空ボイド):製品肉厚部に発生する空洞のこと。
肉厚部の外側は先に冷却固化しますが、内側は遅れて固化します。この時外側に引っ張られて内側に空洞ができます。(空洞は真空になります。)
ヒケは、表面が収縮で凹みます。対して、ボイドは、内側が凹み真空の空洞になります。
肉厚部の収縮や、充填不足が原因です。
気泡:可塑化時のエア巻き込みなどによる気泡のこと。
製品内にエアが入ってします事象。(こちらは真空ではなく空気の混入です。)
計量時のエア巻き込みや、ガス逃げ不良が原因です。
成形機・成形条件による要因
- 保圧が低い
- 保圧時間が短い
- ゲートシール時間の設定が短い
- 空気、ガスの巻き込み
- 可塑化不良(背圧不足)
- 可塑化不良(回転数が速い)
<対策>
- 保圧を上げる
- 保圧時間を上げる
- ゲートシール時間を再設定
- ノズルタッチ部、ホットランナーバルブなど、空気やガスの混入箇所の点検修理
- 可塑化適正化(背圧を上げる)
- 可塑化適正化(エア巻き込みを避けるため回転を適正化)
金型のよる要因
- ガスベント不良
- 製品肉厚部の設計変更
<対策>
- ガスベントの再設計、追加
- 製品肉厚部の設計変更(肉盗み)
原料による要因
- 乾燥不良
<対策>
- 乾燥時間、温度の適正管理
10.クレージング(ヒビ)、クラッキング(ワレ)
クレージング:製品の表面に細かいヒビが入る事象。
残留応力により、後日、弾性限界になり、ヒビが入ります。
クラッキング:製品の一部が割れてしまう事象です。
金型の設計ミスによる、無理な離型も要因です。
2次加工(塗装・接着剤)が要因となることもあります。
成形機・成形条件による要因
- 射出圧力が高い
- 保圧が高い
<対策>
- 射出圧力を低くする
- 保圧を低くする
金型による要因
- 離型不良
- 突出し不良
<対策>
- 離型不良箇所の磨き強化、抜け勾配の再設定
- 突出しバランスを再設計
原料による要因
- GPPS、PMMAは発生しやすい。ABS、HIPSはワレでなく白化する場合がある
<対策>
- 原料の特性を把握した上で原料選定する
技能検定 射出成形作業
合格 対策は こちらから⇓
実技試験まとめ
-
-
技能検定 射出成形作業 1級2級 実技試験 合格対策
続きを見る
学科試験まとめ
-
-
技能検定 射出成形作業 学科試験 1級 2級 合格対策
続きを見る