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高機能素材Week東京展にてトークセッション決定
2023年10月6日(金) 13:30~14:15
パネラー
一成モールド 氏田さん
リングスター 唐金さん
甲子化学工業 南原さん
モデレーター
プラ太郎
コロナ禍により経済が止まってしまいました。さらに、紛争や為替レートの影響など様々な要因が重なり、まだ先行きの見えない状況は続いています。飲食や観光業と同様にものづくり業界もその渦中にあり、各社試行錯誤して事業を持続、また新しい挑戦をしています。
新潟県三条市に拠点を構える一成モールドは、金型の設計製作会社です。
メーカー主導の下請け受注のみに頼るビジネスモデルに難しさを感じた部長であり跡取りである氏田さんは、ToCの金型製作を新たな事業として挑戦しています。この記事では、一成モールドの取り組みとその成果についてインタビューを伺いました。
1. 下請け業態に依存する現状から進化
金型製作は、顧客への依存度が高い業態です。
それは、自社の設備は限られており、仕事を受けられる絶対数は限られているからです。既存顧客からの仕事が安定している時は稼働率は上がり、売り上げは安定している。しかし、今回のような経済状況下では、失注、減産のあおりを受けやすい。
一成モールドが抱える課題は明確だ。現状ではメーカーからの受注に依存し、金型製作は製品のデザインや仕様、機能があらかじめ決められた下請け業態となっている。このため、同社は金型の切削加工やワイヤー加工などの技術の提供に留まり、メーカーとの守秘義務契約があるため、販路拡大を試みるも、独自性をアピールする余地が限られている。
また、コロナ禍の影響もあり、メーカーの新型製作が停滞することで一気に仕事が減少。金型製作が収益の柱となる同社にとって、この状況は深刻な問題となっていた。
プラ太郎
金型製作の現状は、とても厳しいと伺っています。
氏田さん
はい。金型の仕事は、新規の金型製作が主な売り上げですので、お客様の新規開発がなければ仕事がありません。既存金型の修理やメンテナンスといった仕事もありますが、ものづくり業界全体で鈍化している状況では案件は限られています。
工作機械や加工機の消耗費、電気代や人件費など固定費は継続してかかります。金型製作をしたくても依頼がなければ稼働できない苦しさがありました。
プラ太郎
そういった現状から、一般の方や個人向けの金型製作を提供するに至るんですね。
氏田さん
どうにか事業持続をしなくてはと思い、これまで培ってきた金型製作の技術を活かすきっけけになればと、Twitterで発信を始めました。金型製作、金型業界の現状、子育てのことなどパーソナルな内容も含めて等身大を心がけています。
「受注の合間に、個人のお仕事を格安で承ります。」という趣旨のツイートからデザイナーさんや金型製作に関心のある方と徐々に繋がりができました。
2. デザイナーさんと共同開発して見えた自社の強み
一成モールドでは、この逆境を打破すべく新たなアプローチを模索した。BtoBの下請け事業だけでなく、デザイナーや個人向けの金型製作にも注力する決意を固め、特にSNSの活用に着目し、金型作成の日常を発信することで、デザイナーとの接触を増やす取り組みを開始した。
その結果、新たな展開が生まれ、makes and things のデザイナー真鍋さんとの出会いがきっかけとなり、米所新潟に所縁のあるバイオプラスチック素材「ライスレジン®」を活用したブランド「momo Rice Plastic Plate」の開発に至る。
ライスレジン®は株式会社バイオマスレジン南魚沼の登録商標です。
プラ太郎
デザイナーさんと組んでの商品開発はいかがでしたか。
氏田さん
これまでのToBの下請け加工とは違い、金型の専門家として共同開発しているというイメージです。デザイナーさんのイメージする商品をどうやって金型で作り込んでいくかを一緒に企画していきました。
金型加工だけでなく、3DCADを使用した商品デザインのサポートや離型性や成形性を考慮した金型構造の提案など、より川上の商品開発から携わることができ、仕事の広がりを感じています。
プラ太郎
金型製作で培ってきた技術をベースに、守備範囲が広がっていきますね。
氏田さん
そうですね。さらに、商品コンセプトや、価格、ターゲットを決めることにも携わらせていただいています。
今回の「momo Rice Plastic Plate」は、サステナブル×食育がテーマになっています。
新潟の廃米リサイクルから作られたバイオマスプラスチック「ライスレジン」を使用し、プラスチック加工は新潟県燕市の藤田化成さんに協力いただき、新潟にちなんだストーリーになっています。
また、このライスレジンのお皿は、子供の成長に合わせて不要になれば、回収➡粉砕➡リサイクルすることで新しい商品に生まれ変わる仕組みになっています。
これまでの一連のお付き合いを通して、新しい経験をさせていただいていると共に、自社の強みを再認識させていただいています。
3.金型製作技術を公開することで自社アピール
デザイナーとの共同開発により、一成モールドは金型製作のプロセスを公開する機会を手に入れました。これにより、従来は目立たなかった技術力を広くアピールできるようになりました。技術の緻密さや独自性をSNSを通じて発信することで、新たな顧客層にアピールするチャンスを手に入れました。
ライスレジン製品企画(俺の部)スタート🤣👍🏻✨ pic.twitter.com/CkZHIuccGt
— 氏田🔧30代33歳後継ぎ⚙新潟燕三条でものづくりを30年 プラスチック射出成形用金型の企画製作 (@RyosukeUjita) July 21, 2022
プラ太郎
金型製作の風景や技術を公開できるのは大きな成果ですね。
氏田さん
一般的には、金型はお客様の資産であり、守秘義務契約があるので公開はタブーです。しかし今回の企画「momo Rice Plastic Plate」では、商品企画から携われており、その作成ストーリーと共に、自社の金型加工の技術を知ってもらえるとても良い機会になりました。
Twitterで金型製作の実演を公開しているアカウントは少ないので、自社の専門技術をSNSを使って広く認知してもらえました。
4.ToCの試みが自社PRを可能にし、ToBに帰ってくる
この新たな試みは、デザイナーさん向け(ToC)のアプローチを通じて、一成モールドの技術を広めることを可能にしました。SNSを通じて技術の魅力を発信することで、消費者からの関心を引きつけ、知名度向上に寄与しました。そして、その知名度がメーカーなどのビジネス向け(ToB)に戻ることで、新たな受注やパートナーシップの機会を生み出しているのです。この取り組みは、自社PRを進化させつつ、ビジネスの幅を拡大しています。
プラ太郎
個人のデザイナーさん向けの金型製作の企画を請けて良かったことは何ですか。
氏田さん
金型製作の枠を超えて商品企画をサポートできたことが実績となり、金型製作業界の認知も向上しました。「ライスレジンのお皿の新潟の金型屋さん」というブランディングに成功しました。
今後もデザイナーさんとのコラボ企画や、自社製品の開発を進めていき認知を広めると共に、新規のToBの下請け加工のお仕事も頑張っていきます。
金型屋の新規事業?
ここ1,2年、きっかけはこのツイッターから
・従来、企業向けが一般的だったものから個人の方に向けた金型製作
・バイオマス樹脂製品開発支援
・自社製品開発
・部品加工 こちらも個人の方向け
またこうした個人間の繋がりからコラボが加熱している
全てが掛け算されたら面白い🙃— 氏田🔧30代33歳後継ぎ⚙新潟燕三条でものづくりを30年 プラスチック射出成形用金型の企画製作 (@RyosukeUjita) July 3, 2023
プラ太郎
この度は貴重なお時間いただきありがとうございました。
氏田さん
こちらこそありがとうございました。今後もよろしくお願い致します。
一成モールド
公式ウェブサイト
make and things・momo Rice Plastic Plate
公式ウェブサイト