プラスチックファン コミュニティ
インタビュー企画 射出成形業界の様々な方から、お話をお聞かせいただく企画です。
本日は、工場の自働化や装置設計で企業の生産性UPに貢献されている
MR-Techの諸星さんをお招きし、お話を伺いました。
1テーマ20分くらいを予定しておりましたが、
なんと3時間⏰密度の高いスキルを伝授していただきました。
諸星さんは、前職で射出成形工場の工場長をされており、製品設計から、金型作成、射出成形、設備の自働化、プログラム変更まで豊富な知識をお持ちです。
実体験に基づくスキルは説得力が高く、多くの気付きをいただきました。
1本目、2本目のテーマは下記リンクから下記
1本目のテーマ
【1つの金型を異なる成形機で成形する時の注意点】
2本目のテーマ
【型締力のかかり方の違い 直圧式とトグル式】
お伺いした中から、3本目のテーマは
【射出成形における 理屈を語れるようになるには 技術力の磨き方】について解説していきます。
【MR-Techの事業案内】
本記事では、インタビューでお伺いしたノウハウに、一部説明を付け加えて、初心者向けにやさしく解説しています。
技術力のある射出成形者になるには
自信を持って語るには、広い知識と経験が大事
射出成形加工において、射出成形機の条件設定で調整できる範囲は限られています。
射出成形の知識だけでは、課題を解決できないことが多いのは事実です。
- 射出成形
- 金型(設計、製作)
- 原料の物性(汎用樹脂、エンプラ、スーパーエンプラ)
- 機械、装置
- 品質と出来高
- 短納期対応
お客様から求められているのは、合格品を指定数量、納期に間に合わせることです。
「製造部門に携わっているから、射出成形加工しか責任がないし、その他は知らないよ。」
という考え方も間違いではありませんが、
実際問題は何とかして課題を解決しなくては、お客様からの信頼を損ねてしまいます。
射出成形の知識に加えて、様々な知識を掛け合わせる。
最適な提案をするには、日々技術力を磨いていくことが重要です。
1.射出成形の階層を念頭に置く
射出成形工程の上下の階層は、下記の通りです。
製品設計 ➡ 金型設計 ➡ 金型製作 ➡ 射出成形 ➡ 二次加工
階層が上に行くほど、自由度が高くなるとともに、大きな効果が出ます。
射出成形工程は下位に位置しており、成形条件を用いて課題を解決するには限度があります。
製品設計、金型設計、金型製作のノウハウがわかれば、より効果の大きい提案ができるようになりますね。
裏を返せば、製品設計、金型設計、金型製作のシワ寄せが、射出成形にきます。
移管型・自社作成型問わず、射出成形の試作1発目で、成形性や金型の不具合を洗い出すことがポイントです。
成形条件でどうにかしようとすると、量産時に絶対バラツきます。
試作段階で、不具合は、製品の形状修正や金型の設変から取り掛かるべきです。
2.射出成形工程は、不確かな外因が多い
射出成形は、不確定要素がとても多い工程です。
射出成形工程のバラツキ原因
- 原料ロット
- MB、フィラー
- 粉砕材リターン
- 油圧機
- 機械・装置の消耗度
- 検査担当者の習熟度、体調
- 稼働状況の負荷
- 季節(気温・湿度)
射出成形加工は、常にバラツいています。
小さなイレギュラーが重なることで、不良・トラブルが発生します。
不確定要因が多い射出成形工程において、調整できることは限られているため、
試作段階で、製品形状・金型構造を修正しておくことが重要になります。
3.技術力の習得方法
射出成形工程での調整は限度があるため、その他の知識を広くつけていきましょう。
- 金型の知識
・キャビコアの合わせ・ガス逃げ
・冷却水管、冷却回路
・スライドや回転コアの動き方
・コーティング - 製品設計
・その部品単体でなく、勘合物との総合的なイメージを持っておく
・樹脂の特性を調べてみる
・製品の用途を理解しておく - 二次加工
・溶剤やグリースの相性を調べておく
・二次加工に影響ある触り方を知っておく(綿手袋、ゴム手袋、素手)
・組み立て、塗装、メッキ、蒸着などの基礎知識
・1社ではなく複数社からヒアリングしてみる - 機械・装置の知識
・ロボット導入可能か調べてみる(展示会など)
・ハイサイクルや、カスタムが可能か
・自動ゲートカットやインサートが可能か
・画像検査機を調べてみる
情報は広くインプットして、着眼点を育てましょう。
【知っている】がポイントです。いざという時に役に立ちます。
4.試してみる
インプットした知識は、試してみることです。
小さな子供は、転んで転んで、歩き方を身に着けるものです。
技術力も同様です。
怪我はしてはいけませんが、チャレンジしてみることが重要です。
経験したことが、説得力に繋がります。
まずは、手順にそって、成形機に登録されている条件を呼び出し、前回と同じく成形する。
不良が出たら、上長に報告。
その都度対処法を1つづつ習っていきましょう。
理解が進むと、自身で復旧ができるようになります。
金型が悪いからしょうがないと諦めずに、どうすれば課題を克服できるのか、射出成形工程以外の習得を進めていきましょう。
5.正解のない課題へのチャレンジ
コスパ、タイパという言葉が流行っています。
コストパフォーマンス、タイムパフォーマンス。
模範解答がある課題しか取り組めない人が多くなっています。
しかし、ものづくりの現場で起こる課題は、正解なんてありません。
模範解答を見て課題に取り組むのではなく、やってみる。
- ○○だからこうだろう
- ■■を試してみよう
- △△の順番を変えてみよう
トライ&エラーで、最適解を導くことが重要です。
正解のない課題を克服して初めて、実体験に基づく理屈が語れるようになります。
1本目のテーマは下記リンクから
【射出成形における、1つの金型を異なる成形機で成形する時の注意点】
2本目のテーマ は下記リンクから
【射出成形機の構造 型締め機構 直圧式とトグル式の比較】
プラスチックファンでは
本プラスチックファンでは、射出成形の知識、技術を全国の仲間にシェアする活動を通して、本気でプラスチックで世界をより良くできると思っています。
若手の育成。ものづくり業界の閉塞感。人出不足。資材の高騰。
全ての課題は、つながってみんなで情報をシェアすることで何とか乗り越えられると考えています。
1人の悩みが、みんなの悩みです。
1つの課題を解決できれば、全国の射出成形工場が最適化していきます。
また、わからないことや困っていることをなんでも気軽に相談できるコミュニティーも運営しております。
だれでも歓迎です。
新人さん、ベテラン、メーカー、ユーザー、商社、金型屋、3Dプリント、ホビーユーザーたくさんのメンバーが参加しています。
射出成形超かっこいいって胸張って誇れる仲間たちと最高のコミュニティーを作っていきましょう。