射出成形工場では、いかに射出成形機を止めずに稼働させるかが生産性を左右します。
成形機は停止すると、生産が止まるだけではありません。
再立ち上げ時には樹脂のパージが必要となり、多くの場合、その樹脂は製品にならず廃棄となります。
さらに、条件出しや品質確認にも時間がかかるため、停止時間が長いほど歩留まりや生産効率は悪化します。
そのため、金型メンテナンスや設備点検など計画停止を除けば、できるだけ24時間連続で稼働させたいというのが、多くの射出成形工場の本音ではないでしょうか。
しかし、設備を止めないことだけを優先すると、安全や従業員の健康を損なう可能性があります。
そこで重要になるのが、適切な交代勤務のシフト管理です。

シフト管理で気を付けたいポイント
① 労働基準法・36協定を守る
交代勤務では、時間外労働や休日労働が発生しやすくなります。
36協定の上限を守ることはもちろん、勤務と勤務の間に十分な休息時間を確保することも重要です。
近年は「勤務間インターバル制度」の導入も進められており、終業から次の始業まで一定時間の休息を設ける企業も増えています。
法律を守るだけでなく、疲労を蓄積させない勤務設計を意識しましょう。
② ワンオペは避ける
夜勤や休日は人員を減らしたくなりますが、ワンオペはできる限り避けるべきです。
射出成形工場では、
- 金型交換
- クレーン操作
- フォークリフト運転
- 成形機トラブル対応
- 設備メンテナンス
など、一人では危険な作業が少なくありません。
万が一、事故や体調不良が発生した場合でも、最低2名以上いれば迅速な救助や連絡ができます。
安全面を考えても、複数人体制を基本とすることをおすすめします。
③ 夜間の連絡体制を明確にする
夜勤中は管理職や設備担当が不在となる工場もあります。
そのため、
- 成形不良が止まらない
- 設備故障
- 金型破損
- 労働災害
- 停電や火災
などが発生した場合の連絡フローを事前に決めておくことが重要です。
誰に、どの順番で、どのように連絡するのか。
連絡先一覧や判断基準を見える化しておくことで、緊急時にも落ち着いて対応できます。

④ 夏場は作業負荷を考慮する
近年は猛暑日や酷暑日が増えています。
射出成形工場は、
- 成形機
- 金型
- ホットランナー
- 乾燥機
など熱源が多く、屋内でも非常に高温になります。
夏場は同じ作業でも身体への負担が大きくなるため、
- 重量物作業を分担する
- 金型交換を複数人で行う
- 水分・塩分補給を徹底する
- 適切な休憩時間を確保する
など、季節に応じた運用が必要です。
⑤ 高齢化を考慮したシフトを組む
製造業では40代・50代の経験豊富な技術者が現場を支えています。
一方で、
加齢による体力や回復力の変化も考慮する必要があります。
若い頃と同じ勤務を続けると、
- 慢性的な疲労
- 睡眠不足
- 腰痛
- 熱中症
- 集中力低下
につながる可能性があります。
ベテランだからこそ無理をさせない。
経験を活かしながら長く働けるシフト設計も、管理者の重要な仕事です。

射出成形工場のシフト例
① 3班編成・4勤2休・12時間勤務
【勤務例】
- 日勤4日
- 2日休み
- 夜勤4日
- 2日休み
を繰り返すシフトです。
メリット
- 24時間稼働しやすい
- 引継ぎ回数が少ない
- 人員を少なくできる
デメリット
- 12時間拘束で身体への負担が大きい
- 夜勤明けの疲労が残りやすい
- 家族との生活リズムを合わせにくい
年間休日はシフトの組み方によりますが、120日前後となるケースが多く見られます。
② 5勤2休・8時間勤務
【勤務例】
月曜日~金曜日勤務
土日休み
一般的な日勤と同じリズムで、
交代勤務を行う方式です。
年間休日は120~125日程度(会社カレンダーによる)となる企業が多く、日勤者と同等の休日数を確保できます。
メリット
- 身体への負担が比較的少ない
- 生活リズムを整えやすい
- 定着率が高くなりやすい
デメリット
- 引継ぎ回数が増える
- 人件費がやや高くなる

③ 4班編成の変則シフト
例)
- 5勤1休
- 5勤2休
- 5勤2休
を繰り返し、
二直・三直勤務後に2連休を設ける方式です。
GW・お盆・年末年始を会社一斉休業とする企業も多く、
年間休日は110~115日前後となるケースが一般的です。
メリット
- 夜勤後にまとまった休みを取りやすい
- 生産計画を組みやすい
デメリット
- シフトが複雑
- 慣れるまで生活リズムを作りにくい

シフトは会社に合った形が最適
「このシフトが正解」というものはありません。
重要なのは、
- 生産計画
- 人員数
- 年齢構成
- 設備台数
- 金型交換頻度
- 繁忙期・閑散期
などを考慮し、自社に最適なシフトを作ることです。
設備稼働率だけを追い求めるのではなく、安全性と働きやすさを両立させることで、結果的に品質や生産性の向上につながります。
まとめ
射出成形工場では、設備を止めないことが生産性向上の鍵となります。しかし、それ以上に大切なのは、従業員が安全で健康に働ける環境を整えることです。
労務管理や法令を守りながら、ワンオペを避け、夜間の連絡体制を整備し、夏場の暑さや高齢化にも配慮したシフトを設計することで、安定した24時間稼働が実現できます。
良いシフトとは、設備だけでなく「人」も長く安定して稼働できるシフトなのです。