世の中のプラスチック製品の9割以上が、射出成形加工によって成形されています。
射出成形の特徴は、大量生産、軽量、安価、自由なデザインが可能なことです。
従来、木材や金属で作られていたモノに置き換わる新素材として発展してきました。
1960年代に開発されてからこれまでに、様々なプラスチック素材が研究開発されています。
汎用プラスチックや、工業用途のエンプラ(エンジニアプラスチック)、さらに高強度なスーパーエンプラがあり、その物性や特徴、成形しやすさなど、大きく異なります。
この記事では、【AIによる射出条件自動調整システム】で、射出条件の自動調整・脱属人化・不良品ロス削減に貢献している株式会社MAZINさんに、射出成形に使われる樹脂別の特徴や、成形時の注意点、よくある不良事象についてお聞きしました。
本記事は、㈱MAZINが提供している「射出成形のお役立ちコラム」から、一部分をダイジェストでおおくりしています。
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AIによる射出条件の自動調整システム
目次
射出成形における樹脂別の特徴
成形時の注意点 よく起こる不良事象
射出成形で良く使用されている樹脂の解説をしていきます。
【解説内容】
- 樹脂の特徴
- 樹脂の物性
- 成形加工時の注意点
- よくある不良事象の原因と対策
1.汎用プラスチック
PP ポリプロピレン
軽量・安価で加工性が高く、機械的性質が良い樹脂。
全樹脂中の使用量は、No.2(No.1はPEポリエチレン)
- 軽い物性は、水に浮きます。
- PEを強化したようなプラスチック素材。
代表的な用途
- 安価、軽量、機能性の高さ
日用品から工業部品まで様々なジャンルで使用されます。 - 耐水性、耐油性、耐薬品性の高さ
医療、研究分野で、注射器や検査器具などに使用されます。
成形加工時の注意点
PPを使用して成形する時のポイント
- 原料準備
- 加熱筒、金型温度設定
よくある不良事象の原因と対策
- ウェルドライン
- バリ
- ヒケ
- ジェッティングと鼻たれ
- ショートショット
- 寸法異常
PE ポリエチレン
消費量No.1のプラスチックです。
加工性の良さ、安価なことが特徴です。
- 射出成形の他、フィルム成形、ブロー成形、真空成形など様々な加工法で使用されます。
- 一般的に、低密度LDPEと高密度LDPEの2種類に分類される。
代表的な用途
フィルムやシート状に加工され、スーパーのレジ袋や園芸用のビニル、建築資材のラップ梱包材の用途が、3~5割に及びます。
射出成形で使用されるのは、下記の用途です。
- 安価なメリット
大量生産に向いている。高機能を必要としない汎用品。 - 耐水性、耐油性、耐薬品性
体外診断薬や検査機器など。 - 射出成形作業時の用途
安価なため、色替えや樹脂替え時のパージ材として使用されます。
成形加工時の注意点
PEを使用して成形する時のポイント
- 原料準備
- 加熱筒、金型温度設定
よくある不良事象の原因と対策
- シルバー
- ウェルドライン
- ジェッティング
- ショートショット、ガス焼け
- ソリ
- 寸法異常
PVC(ピーブイシー)樹脂
PVC樹脂は、通称【塩ビ】。安価で生産性が高い。
- 射出成形以外にも、押し出し成形、カレンダー成形などで加工される。
- 成形加工時にヤケやすい特徴
- 硬質と軟質の2種類。
代表的な用途
射出成形加工における用途な下記の通りです。
- 硬質PVCの用途
屋外の建築資材、自動車部品、家電部品 - 軟質PVCの用途
医療分野(点滴の輸液バック)、台車のバンパー
成形加工時の注意点
PVCを使用して成形する時のポイント
- 加熱筒設定
- 金型に関して考慮すべきこと
- 成形機に関して考慮すべきこと
- 安定剤配合効果
よくある不良事象の原因と対策
- ヤケ
- シルバーストリーク
- フローマーク
PS ポリスチレン
安価、成形性、透明性が良いことから、広く使用されています。
食品衛生面に優れているので、トレイや容器に使用されます。
- 割れやすい
- 安価な透明樹脂なので、雑貨日用品に使用される
- 一般的用途のGPPS、衝撃特性を強化したHIPSに分かれる
代表的な用途
- 透明性を活かした用途
カバーや容器など外観部品に使用されます。 - 衛生的な特性を活かした用途
食品トレイ、容器 - 絶縁性を活かした用途
家電や自動車部品
成形加工時の注意点
PSを使用して成形する時のポイント
- 加熱筒
- 金型温度
よくある不良事象の原因と対策
- ウェルドライン
- ヒケ
- クラック
2.エンプラ
PC ポリカーボネート
ガラスの様に透明な樹脂。耐衝撃性は全樹脂中でトップクラスです。
高機能エンプラの代表です。
- ハンマーで叩いても割れない耐衝撃性。
- 有機ガラスと呼ばれるほど高い透明性。(アクリル樹脂には及ばない。)
代表的な用途
- 透明性を活かした用途
スマホレンズ、自動車フロントレンズ、遊技機の飾り部品など - 耐衝撃性を活かした用途
ヘルメット、建築資材、コップや調理器具
成形加工時の注意点
PCを使用して成形する時のポイント
- 原料乾燥時
- 加熱筒、金型温度設定
よくある不良事象の原因と対策
- シルバー
- 練り込み異物
- 異材
- ランナー糸引き
- ウェルドライン
- 離型不良
- ボイド
- 湯ジワ
- 吸着汚れ
ABS樹脂(エービーエス樹脂)
耐衝撃性、外観の光沢に優れる樹脂。塗装やメッキの素材に使用されます。
ABS樹脂の名前は、物性の異なる3種類を混合して作成していることに由来しています。
代表的な用途
外観が良く、成形性の良さが特徴です。日用品から工業部品まで幅広く使用されます。
- 外観の良さ
自動車の内装、家電、建築資材、雑貨 - 機能性を活かした用途
PCには及ばないけれど、強度の高い樹脂です。ヘルメットや建築資材に。
成形加工時の注意点
ABS樹脂を使用して成形する時のポイント
- 原料準備
- 加熱筒、金型温度設定
よくある不良事象の原因と対策
- シルバー
- ウェルドライン
- ショートショット、ガス焼け
- 離型不良
- 2次加工時のトラブル
PA ポリアミド
ポリアミドは、通称【ナイロン】。機械的性能に優れている。自動車のエンジンルームやドア内部など見えない部分に使用される。
- 吸湿しやすい。
- 6ナイロン、66ナイロンが有名。
代表的な用途
高機能を活かして、日用品から工業製品まで幅広く使用されています。
衣料(ストッキング、アウトドアウェア)、一般製品(歯ブラシ、釣り糸)、電気部品(コネクタやスイッチ部品)
- 高機能を活かした用途
自動車の内部部品、電気、電子機器 - ガラスを混合してさらに強化
20~30%など樹脂にガラス繊維を混合して強度をアップして使用されます。
成形加工時の注意点
PAを使用して成形する時のポイント
- 成形後にアニーリング
- 原料準備
- 加熱筒、金型温度の設定
よくある不良事象の原因と対策
- 鼻たれ
- シルバー
- ウェルドライン
POM ポリアセタール
摩擦係数が小さく、自己潤滑性に優れる樹脂。摩擦に強い高機能エンプラ。
- ギヤや摺動部に使用
- 寸法安定性が高い
- ホルムアルデヒドの刺激臭
代表的な用途
摩擦に強い性質で、構造部品に使用されます。
- 工業部品
ベアリング、ギヤ、プーリー、駆動部など
成形加工時の注意点
POMを使用して成形する時のポイント
- 原料準備
- 加熱筒温度、金型設定温度
よくある不良事象の原因と対策
- 湯ジワ
- ヒケ
- 真空ボイド
- ゲート凸(ゲート残り)