射出成形において、成形条件を出せるって憧れますよね。
新卒の若手、射出成形がなにかよくわかっていない初心者からすれば、
成形機の画面を「ピピピっ」て触って良品を作る先輩は
かっこいいぃぃぃ!!!ってなりますよね。
そんな
初心者、若手向けに、
成形条件の基本をかみ砕いて易しく解説していきます。
目次
1.射出成形 基本 ポイント
まずは、射出成形の基本は、すごくすごく簡単に言うとこんな感じです。
- 素早く充填(樹脂は金型に触れた瞬間冷めていきます。)
- 収縮分を考えて保圧する
- 金型の役割は、「形作ること」と「熱交換」(熱い樹脂を、詰めて→冷ます)
- 製品の形状、原料の種類、使用する用途に合わせて成形する。
ただ、金型に溶けた樹脂を充填すれば良いってもんじゃありません。
成形不良の例を挙げると
- 金型に樹脂を入れすぎる→オーバーパック
- 金型の隅まで充填してない→ショートショット
- 充填したけど、面に張りがない→ヒケ
- 充填中にガスを巻き込む→製品内に気泡 など
出来上がりの製品や、金型の形状を見て、どう充填するかを見極めていきます。
[ad]
2.良い成形条件とは
成形条件に完璧なものなんてありません。
その時の、原料の状態(原料の製造ロット)、季節気温湿度、金型の消耗度合など、若干異なります。
また、成形条件を出した人によっても、成形条件は違ってきます。
では、良い成形条件って何でしょうか?
答えは、【お客様の求める製品を作れる条件】です。
お客様の求める限度内に品質を確保して、納期に必要数を収められること。が重要です。
ヒケていようが、シルバーがあろうがお客様がいいと言えば、「良品」です。
1~10あるレベルで3~7が「良品」であるならば、
様々な影響(原料のロットブレ、季節、気温、湿度など)によるバラツキを限度内に抑え、必要個数を作れる条件が良い成形条件です。
3.成形条件のイメージ
慣れてくると製品や金型を見て、どんな条件で打てばよいかイメージできる様になります。
いくつか例を挙げて、成形条件のイメージを紹介します。
ケース① 薄肉の製品
薄肉の製品は、金型内の狭い空間を樹脂が流れていきます。
充填した樹脂は、金型に触れた所から冷え始めます。
流れている樹脂の先端が金型の最後に行き着く前に、手前が冷えてしまっては、いくら押しても詰め込めないですよね。
薄肉の製品は、冷える前に高速で充填させます。
流れにくい時は、樹脂温度、金型温度も高く設定します。
保圧も低くて十分、冷却時間も短く。
【ポイント】
- 充填速度 高
- 保圧時間 短
- 冷却時間 短
ケース② 肉厚の製品
肉厚の製品は、薄肉の製品に比べてストレスなく充填できます。
金型内の樹脂が通る道が広いからですね。
射出速度は低くで十分、肉が熱い分、冷却時の熱収縮が大きいのがポイントです。
収縮を補い面を張らせるために保圧力と保圧時間で調整します。
金型内で、冷却もしっかりします。熱いまま取り出すと、寸法が収縮して小さくなります。
金型温度も低めで、ガンガン冷やして固めるイメージです。
【ポイント】
- 充填速度 低い
- 保圧力 高い
- 冷却時間 高い
[ad]
ケース③肉薄と肉厚の合わさった製品
ほとんどの製品は、肉が薄いところもあれば厚いところもあります。
上の①、②で解説した合わせ技を使って行きましょう。
(ⅰ)スクリュー位置と金型内充填量を調べる
充填される樹脂が金型内をどう流れていくかを見ていきます。
ポイントは先端がどう流れるかです。
- 計量完了 100mm
- 充填開始
- ゲート通過 90mm
- 肉厚部通過 50mm
- 肉薄部通過 30mm
- VP切り替え位置 10mm
- 流動末端到達 5mm
- クッション最少位置 3mm
スクリュー位置何mmの時に、金型内のどこを通過するかをイメージしましょう。
【樹脂の流れ方を調べる方法】
見えない金型内で樹脂の流れを調べられないですよね。
調べる方法は、調べたい位置で射出を止めてしまうです。
ゲート通過 を調べたい時は、計量100mmからまで90mmまで充填してみましょう。
樹脂は、設定した分しか充填されませんので、10mm分の樹脂が充填されます。
同じように、100mmから80mmではどこまで充填されるかなぁ。
70mmは?60mmは?と探っていきます。
ここでの注意点
金型から製品を取り出す時、ストリッパースレート、エジェクターピン、エアー吹き出しで取り出します。
製品がショートしているので、突き出せないことがあります。
そうなると製品を取り出すのが大変です。手で取れればいいんですが、金型の形状に食い込んで取れないこともあります。
そんな時は、バーナーであぶった棒や、ハンダ小手などで、部分的に焼き切って取ることになりすごく時間がかかります。
(ⅱ)外観を見て射出速度を調整
話を戻します。
何mmのスクリュー位置で、金型のどこを流れているかわかったら、製品の外観をみて速度を調節していきます。
- シルバーが出ているところ→速度を下げる
- 湯じわが出ているところ→速度を上げる
- 袋小路でガスを巻き込んでいるところ→速度を下げる など
製品を見て、射出速度を位置ごとに多段階に調整していきます。
(ⅲ)VP切り替え位置を設定
そして、金型内の90~95%くらいまで充填したところで、保圧に切り替えます。
ゲートシール時間を調べて、適正な保圧時間を決めていきます。
ゲートシール時間の考え方は下記記事内で解説してます。
-
-
【保存版】射出成形 成形条件の作り方 条件出しの基本 特級技能士が徹底解説
続きを見る
(ⅳ)重量、寸法の調整
重量、寸法が品質基準の限度内には入る様調整します。
- 重量は計量位置を上げ下げ
- 寸法は、冷却時間短く→小さく、長く→大きく
- 寸法は他に、金型温度を高く→小さく、低く→大きくなります
- ヒケは、保圧力を高くします
- バリは、保圧を低くします
4.まとめ
射出成形の基本を、初心者向けに、易しくかみ砕いて解説しました。
まずは、製品の形状でどんな感じで充填させるのが良いか。イメージしてもらえたらと思います。