技能検定 射出成形作業 1級 学科試験
第2分類「成形加工法」試験科目及びその範囲の細目
10科目が対象となります。
- 射出成形法の種類、特徴及び用途
- 射出成形条件の設定及び成形品の品質
- 成形材料の予備乾燥
- 成形材料の色替え及び材料替えの方法
- 成形不良の原因及び防止対策
- 成形品の仕上げ及び二次加工の方法
- 成形品の測定
- 成形材料の着色剤及びその混合方法
- 成形品のアニーリング
- 成形品重量及び歩留りの計算方法
各科目ごとに、その範囲の細目と例題を添えて説明致します。
今回の記事は長~いです!!
でも大丈夫ゆっくり1問1問学習しましょう!!
1.射出成形法の種類、特徴及び用途
<細目>
射出成形法の種類、及び特徴及び用途について詳細な知識を有すること。
例1)2色射出成形機は、2本のシリンダを有し、2種類の材質、色を一体成形することができる。
↑「正」
例2)射出圧縮成形法やガスアシスト射出成形法における充填圧力は、一般の射出成形法よりも低くてよい。
↑「正」
例3)プリプラ式射出成形における計量及び射出は、共に射出シリンダで行われる。
↑「誤」
プリプラ式射出成形機とは、計量と射出が別シリンダーで行われる。
2.射出成形条件の設定及び成形品の品質
<細目>
1.成形条件の設定に関し、次に掲げる事項について詳細な知識を有すること。
- 加熱筒、ノズル及び金型の温度
- 射出圧、背圧及び型締圧
- 射出時間、保圧時間及び冷却時間
- 射出速度、型閉じ速度及び型開き速度
- スクリュー回転数
- 成形材料の計量
- 射出速度・射出圧力の切替え
2.成形条件と成形品の品質との関係について詳細な知識を有すること。
例1)流動配向は、金型温度や樹脂温度が低くて、射出圧力が高いほど生じやすい。
↑「正」
例2)射出成形においてMFRの大きいポリマーを用いる場合は、小さいものを用いる場合よりも、射出圧力を高くしなければならない。
↑「誤」
MFR=メルト フロー レート 溶融プラスチックの流動性の大きさ。数値が大きいほど流れやすい。
例2)射出成形機の射出シリンダーの断面積が100c㎡、油圧が10Mpaの場合、スクリューの断面積が10c㎡であれば、射出圧力は100Mpaである。
↑「正」
射出圧力=(射出シリンダーの断面積)/(スクリューの断面積) X 油圧
3.成形材料の予備乾燥
<細目>
熱可塑性樹脂の予備乾燥に関し、次に掲げる事項について詳細な
知識を有すること。
- 予備乾燥の効果
- 予備乾燥を必要とする成形材料の種類
- 予備乾燥の方法
- 予備乾燥の温度及び時間
例1)PAの予備乾燥で材料の変色を防ぐには、真空乾燥が適している。
↑「正」
例2)一定以上の水分を含んだPBTは、加熱溶解すると、加水分解を生じる。
↑「正」
例3)熱可塑性ポリエステルは、吸湿により加水分解をおこし、強度が低下するので、乾燥には十分気をつけなければならない。
↑「正」
4.成形材料の色替え及び材料替えの方法
<細目>
成形材料の色替え及び材料替えの方法並びにパージ材について詳細な知識を有すること。
例1)黒色ABS樹脂の成形終了後、スモーク色のPCに色替えするには、パージ剤を使用する必要はない。
↑「誤」
黒色は色が強いので、次の材料が薄い色の時は、パージ剤を使うと良い。
例2)黒色PCの成形終了後、スモーク色のPMMAに色替えするには、パージ剤を使用する必要はない。
↑「誤」
「例1)」と同様に黒色は色が強いので、次の材料が薄い色のときは、パージ剤を使うと良い。
5.成形不良の原因及び防止対策
<細目>
次に掲げる成形不良の原因及び防止対策について詳細な知識を有すること。
- 充てん不良
- ひけマーク
- ボイド
- バ リ
- ウェルドマーク及びフローマーク
- ジェッティング
- 色むら及び変色
- 焼け及び黒条
- 銀 条
- 異物混入
- 光沢不良
- 透明度不良
- はく離
- 埋込み不良
- そり、曲がり及びねじれ
- き裂(クラッキング)及びひび(クレイジング)
- 型きず及びすりきず
- 離型不良
- 白 化
- 強度不足
- 寸法不良
例1)GPPSの割れ防止対策として、適切でないものはどれか。
イ 冷却時間を長くする。
ロ 金型温度を上げる。
ハ シリンダ温度を上げる。
ニ 保圧を下げ、保圧時間を短くする。
↑(イ)
4つの候補のうち3つは適切であるので、1つだけ逆の方向に条件出しになっています。そのテクニックもふまえて考えましょう。
ここでは、金型内からエジェクトするさいの割れ防止対策ですので、エジェクトしやすい方向に条件出しをします。
例2)ウエルドマークを小さくする対策として、誤っているものはどれか。
イ 材料温度を上げる。
ロ コールドスラグウェルを設ける。
ハ 金型温度を高くする。
ニ 射出速度を遅くする。
↑(ニ)ウエルドマークとは、充填工程で分岐した樹脂が合流する際に、樹脂温度が下がってしまい完全に融合しないで、糸状の線マークを生じる現象です。「合流する際に樹脂温度が下がりにくい」方向に条件出しをします。
例3)ひび割れの対策として、適切なものはどれか。
イ 金型温度を上げる。
ロ 射出一時圧を上げる。
ハ 射出速度を上げる。
ニ 射出二時圧を上げる。
↑(イ)ひび割れは、可充填や、エジェクト不良などに起因しますので、逆方向に条件出しをします。
6.成形品の仕上げ及び二次加工の方法
<細目>
次に掲げる成形品の仕上げ及び二次加工の方法について詳細な知識を有すること。
- ゲート仕上げ
- つや出し
- 穴あけ
- タッピング
- バリ仕上げ
- 溶着、接着及び結合
- 塗装及び印刷
- ホットスタンピング
- めっき及び蒸着
例1)二次加工に関する記述として、最も適切なものはどれか。
イ PMMAには、塗装ができない。
ロ ホットスタンピングは、膜厚を厚くできない。
ハ 超音波溶着は、異種の材料間を溶着できない。
ニ PCには、めっき処理ができない。
↑(ロ)ホットスタンピングは、何種類か方法があるが最も多く使われているのは型押し式です。「箔」を熱した型板と成形品の間に入れて加圧します。この「箔」は0.1mm以下で、膜圧を厚くできません。
例2)プラスチックのクロムめっき処理に関する記述として、適切でないものはどれか。
イ 下地よりもクロムを厚くする。
ロ 下地には銅やニッケルが使われる。
ハ 素材の表面を化学エッチングする。
ニ 素材の表面は、脱脂する。
↑(イ)
例3)次の文中の( )に入る語句として、適切なものはどれか。
同質プラスチックを接着する場合、( )は溶剤接着が不可能である。
イ ABS樹脂
ロ PC
ハ PMMA
ニ POM
↑(ニ)
7.成形品の測定
<細目>
成形品の測定に関し、次に掲げる事項について詳細な知識を有す
ること。
(1) 成形品の形状及び寸法の精度
(2) 次の測定器による測定方法及びその保守イ ノギス、ハイトゲージ及びマイクロメータ
ロ ダイヤルゲージ
ハ 各種基準ゲージ
ニ 各種限界ゲージ
ホ 光学的測定器
ヘ 三次元測定器
例1)マイクロメーターのラチェットストップは、測定圧を一定にする働きはない。
↑「誤」ラチェットストップで測定圧を一定にしています。
例2)ノギスの使用に関する記述として、適切でないものはどれか。
イ 使用の前後は、必ずきれいに拭き取る。
ロ 止めねじは、できるだけ固く締める。
ハ M型ノギスで小さな穴の径を測るときは、見かけ上、小さめに読み取ることが多いので気をつける。
ニ 外側測定に際しては、被測定物をできるだけ基準面に近いところにはさむ。
↑(ロ)
4つの候補のうち、表現が難しかったり、初見だったりしても、この問題(ロ)のように完全に不適な解もありますので、惑わされずにしましょう。
例3)文中の下線部のうち、誤っているものはどれか。
三次元測定器は、測定検出器(プロービングシステム)が互いに直角なX軸、Y軸、Z軸の各軸方向に移動し、空間座標を読み取ることができる測定器であり、型板のガイドピンの穴の(イ)直径、穴と穴の(ロ)中心間距離、穴の(ハ)傾き角度、穴の(ニ)内面の表面の粗さ等を効率よく測定できる。
↑(ニ)三次元測定器はX軸Y軸Z軸を用いて位置情報から寸法測定をする器具です。この問題にある「内面の表面の粗さ」は測定できません。
8.成形材料の着色剤及びその混合方法
<細目>
成形材料の着色剤及びその混合方法について概略の知識を有すること。
例1)顔料と成形材料(ペレット)を混合気(タンブラー)で混合する時、湿潤剤を加えるとペレットに顔料が均一に分散され飛散しにくくなる。
↑「正」
例2)着色剤と成形材料に関する記述として、適切でないものはどれか。
イ ABS樹脂は、マスターバッチで着色できる。
ロ PSに顔料を混ぜて着色する場合、タンブリングする。
ハ 白に着色された材料でも、カーボンブラックを混合すれば黒になる。
ニ 透明の着色には、染料が適している。
↑「ハ」白と黒は強い色です。混ぜると灰色になります。小学校で絵具を使ってポスターを描いた時を思い出していただければ、想像できるとおもいます。
例3)マスターバッチ法とは、あらかじめ高濃度に着色したペレットを、ナチュラルペレットで薄めて着色原料てして使用する方法である。
↑「正」
関連
9.成形品のアニーリング
<細目>
成形品のアニーリングの効果及び方法について一般的な知識を有すること。
例1)アニーリングの効果として、成形品の残留応力が緩和され、印刷のインキがのりやすくなることがある。
↑「正」
例2)厚さ3mmのポリカーボネート成形品の残留応力を除くには、120~130℃の空気浴中で20分程度アニーリングするとよい。
↑「誤」ポリカーボネートは1~2時間のアニーリングが必要です。ここの20分間では不十分です。
例3)熱可塑性樹脂成形品を塗装したときに、表面に細かいクレージングが発生した場合は、成形品のアニーリングを行ったり、結晶性樹脂に切り替えるとよい。
↑「正」
10.成形品重量及び歩留りの計算方法
<細目>
成形品重量及び歩留りの計算方法に関し、次に掲げる事項について概略の知識を有すること。
(1) 重量計算の方法
(2) 成形不良率及び歩留りの計算方法
例1)体積が同じ場合、PPで105gの成形品は、PS一般グレードでは、100gとなる。ただし、PPの比重を0.90、PSの比重を1.05とする。
↑「誤」
比重の比較の問題です。基準となる比重は、PP:PS=0.90:1.05とすると記述がありますので、この式にPP質量105gを入れてPS質量が何gになるか確認しましょう。
PP(105):PS=0.90:1.05
PS×0.90=105×1.05
PS=105×1.05÷0.90=122.5
基準となる比重に対して、計算確認してみた結果PSは122.5gとなるので、この問題は誤りとなります。
例2)1個90gの製品を1000個成形したところ、不良品100個が発生した。これに要した材料が100kgである場合の材料歩留り率は81.0%である。
↑「正」
材料歩留り率=良品の使用量÷使用した材料量×100
まず良品の使用量を求めます。
良品の使用量(kg)=90(g/個)×900(個)÷1000=81(kg)
材料歩留り率=81÷100×100=81%
ですので、正となります。